【0119】新入社員研修のあるべき姿とは 2 of 2

10-ビジネス法務77一般スキル, 97最終話

【転1】量について

課題の量が多いことについて、その意図は、

研修の課題は家でやってプライベートを犠牲にするくらいの気概がないと、ということかもしれません。

(日野)は新卒で入社した当時は、退社後や休日に睡眠時間を除く多くの時間を業務課題の検討に使っていたように思います。

 

思い返すと、(日野)の父母もそうだったように思います。

なんだか判らないたくさんの文字が印刷された本を読んでいたり、ワープロに向かって打鍵していたり考え込んでいたり、していました。

(日野)の両親がこのように家で仕事をしていたというのは小学校3年生くらいの記憶です。

子が10歳くらいになって、子育ても一段落すると、家に仕事を持ち込めるのかもしれません。

いま乳幼児を抱えて子どもの言動を日々見ている身としては、希望としてそうあって欲しいと思う程度で、期待度はゼロです。

 

そうして子育てが一段落した暁には家に仕事を持ち込めるようになったとして、

会社側の立場に立つと、今日日情報漏えいに厳しい世上にありながら、会社PCでつくったファイルを持ち出しすることを黙認してまで、プライベートに課題をやらせる価値があるでしょうか。

 

新卒で単身ならまだしも、配偶者も子もある中途採用者には、そこまでやらせるようなカリキュラムは無駄が多いように思います。

まず、新卒入社でなければ学生気分の払拭は不要でしょう。

中途でもバイト経験だけとか長期の休職明けなら必要かもしれませんが、そういう人たちには別のやりかたがあると思います。

次に、中途入社であればどうでしょうか。新卒と比べて経験が豊富だから優先順位も付けられるし、多少物量が増えてもさばけるでしょ?という考え方もあるかもしれません。

これに関しては複雑です。確かに捌けは上手くあるべきですが、

中途入社は新卒採用に比べて業務量も多く、

年齢が異なれば家庭の状況もばらつきが大きくなり、やりたくても子育てや介護があれば家ではできない、

さらに、良質な研修であればあるほど数少ない成長機会を活かしたくなり、「捌く」という発想から遠のきます。

結果、物量をさばけないことになります。課題を与えた側からするときっと、こんなものか、とがっかりすることでしょう。

【転2】質について

質については、量とちがって年齢による差がなく、新卒でも中途でも課題における質の重要性は変わらないように思います。

論理的思考のような基礎スキルが一定以上レベルで共有されていると議論も進めやすく物事がスムーズに進みます。

 

そのような利点が大きいと思われる一方で、

画一的なカリキュラムで統一的な思考方法をインストールすることで、極端な発想を抑制することになります。

 

革新的で爆発力のある新商品や新サービスというものを生み出す発想の方法というのは、帰納法や演繹法とは異なるところにあるように思います。

画一的なカリキュラムで統一的な思考方法をインストールするのは、構成員の知能レベルの底上げという意味では重要ですが、それが均質化を意味するのであれば、弊害も生れ、事業や会社の成長フェーズによっては、効果より弊害が大きくなることもあるのではないでしょうか。

【結】21世紀新入社員研修のあるべき姿とは

そもそもかもしれませんが、「今回(日野)が受けてみた新入社員研修」の新入社員というのは新卒の新入社員を意味しています。

しかし当社は、同じカリキュラムを中途採用にも課そうとしています。

あらためて新入社員研修の目的とは何なのか、ということを考えたときに、その内容を量と質の2面からまとめると、ざっくり

  • 量は、学生気分の払拭や優先順位の意識づけなどが目的と考えられ、
  • 質は、当社で仕事を進めるうえで知っておくべき思考方法の落し込みや議論の質を高めるための基礎スキルの定着などが目的ではないか、

ということにまとめられます。

こうしてまとめてみると、今回(日野)が受けてみた新入社員研修というのは、前時代的なカリキュラムだと思います。

30代半ばで、それなりの仕事があり家には幼い子も居る(日野)が、新入社員向けの研修を受けてみたわけですが、中途採用にも新卒新入社員と同じカリキュラムを課すとなると、(日野)と似たような状況でこのカリキュラムを受ける人がいつか現れるわけです。

いまは新入社員みんながみんな新卒ではありません。中途入社も当たり前です。

その会社の文化や仕事の進め方を学び、その会社独自の考え方に思考回路を統一するというのは、戦後といわれた20世紀の後ろ半世紀、製造業が中心で、皆と同じことを決められたとおりに上手くやることが求められたときにはそれが必要だったのだろうと思います。

しかし今はそうではなく、現状維持は衰退と同義であり、他所と同じことをしていては埋もれてしまう世の中です。

 

ビジネスの形も労働集約型だけではなくなっています。

突飛なアイデアが、競争環境を変えてしまうような、会社規模の大小に関係なくゲームチェンジャーが出現してしまうような時代です。

そんな状況で、社員全員がみな同じ発想同じ思考で、社員全員の誰に聞いても答えは同じの金太郎飴状態ではビジネスを推進する力が失われるのではないでしょうか。

 

当社もそれは理解していてダイバーシティ推進運動などしています。

それなのに、新入社員向けとして、新卒も中途も変わりのない画一的なカリキュラムを準備しようとしています。

ダイバーシティ推進運動をしながら、入社時の年齢やキャリアに関係なく一律の研修プランを課すようでは、せっかく異分子的人材を受け入れることができたとして、その革新的で強烈な突破力を押し殺すことになるように思います。

そうなれば会社と社員の双方に損失というだけでなく、社会にとっての損失となります。

今回(日野)が受けた当社の新入社員向けのカリキュラムは、暫定的なものなので、よりよいものになるように、制度元に率直な感想を伝えていきたいと思います。

–完–


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