【0267】予選の予選はできない

10-ビジネス法務

古物商の申請を4・5回、役員変更の登記を2・3回経験して、

21世紀になって、お役所も親切です。

登記申請の記入例は法務局自身がWebページで公開してくれています。

不動産登記はともかく商業登記が司法書士の独占業務なんてばからしいと思っていた頃の話です。

 

いよいよ代表取締役の交代手続きを行うことになりました。

内部昇格ではなく、社外人材が抜擢されるパターンです。

具体的に考えるために、3月決算の取締役会設置会社で、
株主総会が6月29日(火)(いわゆる集中日というやつです)と仮定しましょう

下の表は、議題決定の取締役会から、役員就任の登記申請までの実施項目と実施する日付です。

【表1】

項目

日付

取締役会構成員

① 議題決定の取締役会

6月20日(月)

代表A、B、C

② 株主総会招集通知の発出

6月21日(火)

代表A、B、C

③ D氏を7月1日付で取締役に選任する株主総会

6月29日(水)

④ D氏を7月1日付で代表取締役に選任する取締役会

6月29日(水)

代表A、B、C

⑤ 代表取締役Dの就任

7月1日(金)

代表D、B、C

⑥ 代表取締役D就任の登記申請

7月15日(金)

 

この①~⑥で、日付の間違っているところがあります。

日付でいうと、②と③は1週間以上、⑤と⑥は2週間以内、と
法定の期日がありますね。

 

今回の話はそこではなく、
日付どころか、順番さえまちがっています。

法務局の方には「予選の予選はできない」と教えていただきました。

 

④と⑤です。

取締役Dが就任する前に、代表取締役Dを選任することができません。

もっと正確にいうと、代表取締役は、選任を決定する際の取締役会構成員の中からしか選べません。

 

予選(③で居ない人間を取締役に選任)はできるけど、

予選の予選(④で居ない人間を代表取締役に選任)はできません。

 

根拠条文は、こちらだそうです。

会社法362条3項 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選任しなければならない。

いま読めば、そうとしか読めないのですが、

指摘されたその時は納得できずに食い下がった覚えがあります。
だって、取締役会の開催予定を再調整しないといけなくなりますから、必死です。

そんな(日野)に、やさしく教えてくれました。
(日野)の会社を管轄する法務局には相談コーナーが用意されていて、やさしく教えてくれました。

いわく「“取締役の中から”だからすでに取締役に就任されていないとダメなんです」と。

21世紀の役所、親切です。

この相談コーナー、OB職員の再就職受け皿ではあると思いますが、親切です。
ご自身の経験をフルに発揮できるわけですから、無知な(日野)に教え諭すことで承認欲求も満たされます。最高の再就職先です。
職人気質で率直な物言いではありますが、親切です。

この点、やっぱり役所の職員OBは強いです。公務員の再就職で各種の士業がありますが、税務署OBの税理士、法務局OBの司法書士、官公庁OBの行政書士、というのは、試験合格の士業には出せない強みがあります。

というわけで、代表取締役選任の正しい段取りは下の通りです。

【表2】

項目

日付

取締役会構成員

① 議題決定の取締役会

6月20日(月)

代表A、B、C

② 株主総会招集通知の発出

6月21日(火)

代表A、B、C

③ D氏を7月1日付で取締役に選任する株主総会

6月29日(水)

④ 取締役Dの就任

7月1日(金)

B、C、D

⑤ D氏を代表取締役に選任する取締役会

7月1日(金)

B、C、D

⑥ 代表取締役Dの就任

7月1日(金)

代表D、B、C

⑦ 代表取締役D就任の登記申請

7月15日(金)

Dさんが取締役に就任して、ボードメンバーとなってから代表取締役の選任をしましょう。

 

–次回につづく–

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