【0269】代表取締役の登記申請に捺す実印(予選の予選はできない おまけ1)

10-ビジネス法務

この投稿、本来6月4日にアップする予定でしたが、まさに株主総会の段取り真っ最中でした。

ようやく今日、投稿します。

 

前回【0267】までで見てきたように、代表取締役選任の正しい段取りは下の通りです。

前提は、内部昇格ではなく、社外人材が抜擢されるパターンです。

3月決算の取締役会設置会社で、株主総会が6月29日(火)(いわゆる集中日)と仮定しています。

議題決定の取締役会から、役員就任の登記申請までの実施項目と実施する日付を挙げていくと、下の【表2】となりました。

【表2】

項目

日付

取締役会構成員

① 議題決定の取締役会

6月20日(月)

代表A、B、C

② 株主総会招集通知の発出

6月21日(火)

代表A、B、C

③ D氏を7月1日付で取締役に選任する株主総会

6月29日(水)

④ 取締役Dの就任

7月1日(金)

B、C、D

⑤ D氏を代表取締役に選任する取締役会

7月1日(金)

B、C、D

⑥ 代表取締役Dの就任

7月1日(金)

代表D、B、C

⑦ 代表取締役D就任の登記申請

7月15日(金)

 

今回、おまけは

この【表2】が正しいとき、⑦で必要となる書類の話です。

より具体的に言うと、

⑦代表取締役Dの就任登記で必要となる書類に、
役員が捺すべき印鑑はどれが正しいか、という話です。

役員が捺すべき印鑑、選択肢は3つです。
「会社の代表印」「役員個人の実印」「役員個人の認印」の3つで、
ほとんどのことは「役員個人の認印」で足りますが、そうでない場面があります。

 

まず、⑤(D氏を代表取締役に選任する取締役会)の議事録の話です。

⑦登記申請書の添付書類です。

答えは、⑤に出席した全役員について個人の実印+印鑑証明が必要です。

 

これは、きつい。会社によって役員が何名いるか、規模と社長のお考えによって様々だと思いますが、全員の実印+印鑑証明、ハードル高いです。

なんとかして回避できないかと、法務局が提供してくれている記載例とにらめっこしながら、

「前任者の辞任前なら代表印押しておけばいけると読める!」と勝負をして負けました。

法務局から頂いた「補正してちょうだい」の電話で気づいて、またしても役員に頭を下げて回りました。

もはや「信じてください」とも言えません。ただひたすらごめんなさいです。

これに関しては、例外規定を何度読んでも理解できませんでした。

理解できないことで勝負をしてはいけないという、教訓です。

 

次に、印鑑届です。

代表が変わる際は、会社の代表印を登録します。

この会社の代表印の届出書には、代表となるD氏の個人の実印を捺していただくことになります。

D氏に「実印をご用意ください」とお願いして「なんでなん?」と聞かれると答えられません。

個人事業主なら実印を求められていいと思います。

公開会社の子会社である株式会社で、代表取締役の印鑑登録に本人個人の実印、なぜでしょうか。

 

考えられるのは、取締役として適格であるかの証明です。

会社の取締役には欠格事由がありますので、実印登録ができていることで欠格事由に非該当を担保できるのでは、と考えてみましたが関連が見当たりません。

実印登録がされているということで証明できるのは、住民票があることです。

う~ん、それだけ?

実務を経験するうちにいつか、解明できる日がくるのでしょうか。

 

–次回につづく–

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