【0297】「5W1H/八何の原則」と「利益の比較衡量 /権利と義務のバランス」のあいだで

14-連載-法務三大フレームワーク

【0291】【0293】まで、5W1Hと八何の原則が何を示す言葉で、
なぜ「5W1H/六何の原則」ではなく、「5W1H/八何の原則」なのか、
ということを書いてきました。

【0294】からは、「5W1H/八何の原則」の有用性について、
具体的な使い方を挙げながら書いてきました。

今回で5W1H/八何の原則の使い方4つめですが、これが法務三大フレームワークの最後、「利益の比較衡量 /権利と義務のバランス」につながっていきます。

どう使う?-4 契約書

先輩の法務担当者でYさんが、契約書を確認されるときによく言っていたのが、
「仕様書ありますか?」でした。

質問を受けた方は「システム開発ではないので仕様書はありません」と答えていましたし、
(日野)もそう思っていました。Yさんは何を言っているのだろうか、と。

お向かいの席で繰り広げられるそのようなやりとりも、数ヶ月聞いているとようやくYさんの求めている物がわかってきました。

Yさんが仕様書といっていたのは、誰が、誰に対して、何を、どうやって、いつ、いくらで 行うのか、など5W1Hを明文化した紙のことです。

それを仕様書と呼ぶかどうかは置いておいて、なるほど、それがないと、契約書の確認はできないなと、理解しました。

 

市販の契約書ひな形を何冊読んでも契約書チェックができるようにならないと
悩んでいる方がおられるかもしれませんが((日野)はそうでした)、
それは仕方のないことです。

市販の契約書ひな形にはYさんがもとめる仕様書がついていません。
前提がないなかで一般条項に近いものが並んでいます。

成果物の所有権の移転タイミングはどこか、
著作権はどちらが持つか、
損害賠償の上限を設定するか否か、
裁判管轄はどちらを有利にするか、など

契約書ひな形をみると、自社を有利にした物ばかりです。

それらをいくら覚えても、契約書チェックはできません。
それは、仕様書がないからです。

誰が、何を、いつ、いくらで行うのか、
成果物と対価のバランスとのセットで考える必要があります。

たとえば、
何を・いくらで と 権利の帰属がどちらでいつ確定するか はセットで考えます。

相手方有利な「権利は受注者から移転しない」より、
自社有利な「発注者への納品時点ですべての権利が自社に移転する」のほうが
より多くのお金を支払わないとバランスしません。

権利と義務のバランス、これを考えないと、まともな契約書チェックはできません。

このバランスの見極めをすることが、
弁護士等の社外の専門家からは得ることのできない、ホウタンの真骨頂だと思います。

–次回につづく–


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