経営学の古典ブックガイド

2020年9月19日から投稿の【0228】経営学の古典を読むで列挙した経営学の古典、

(日野)を含む中堅どころ、一般的には係長など役職がつきはじめる頃から課長くらいまでが知っておくべきもの

その役職であれば知ってないと仕事に支障があるものに加えて上位の役職者が当然に知っているものを含み、一定以上の役職者の知識レベルが一般化されているであろう書

を挙げていきます。

 

すべての土台、「論理的思考」はこれ1冊

バーバラ・ミント『考える技術・書く技術』

必須です。現代に仕事をするために最低限必要になる頭の使い方がたった1冊にまとめられています。
ロジカルシンキング、クリティカルシンキングなどと無数の本がありますが、すべてはこの1冊を理解するための参考書と考えましょう。

無数にある参考書なかで(日野)のオススメはグロービス社が行っているクリティカルシンキング講座です。

 

経営学の入り口、「ゼネラルマネジメント」はこれ1冊

P.F.ドラッカー『現代の経営』(上・下)

“ドラッカーを神と祀り上げるのは日本だけ”という意見を見たこともありますが本当でしょうか。マネジメント全体に触れつつ、各所に著者の鋭い視点や主張がしっかりと入っています。

「“これ1冊”って言って上下2冊の600ページ超ですやん」という方はまず下巻から読んでみるとよいと思います。組織・人に関する身近で入り込みやすい論点が多く、その論点に対する著者の主張は多くの人が納得できるであろう((日野)に至っては納得ではすまず共感・同感・感動という)点で、読み進めやすいと思います。

 

ヒト・モノ・カネの「ヒト」HR/組織行動①

M.ビアー他『ハーバードで教える人材戦略』

HRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)という言葉があります。新卒~平社員の間は関係のない言葉です。中小企業基本法で大企業に分類されるようような会社で役職がつくようになってくるとやおら、身につまされ、考えさせられることが多くなる言葉だと思います。

いまの自分が社長や部長や人事にどう見られているかを知るための本。

 

ヒト・モノ・カネの「ヒト」HR/組織行動②

スティーブンP.ロビンス『組織行動のマネジメント』

①は周りから自分がどう見られているかを知る本であるのに対して、こちらは自分を中心に周囲(特に部下や所属メンバー)を見る方法を考えるための本。

部下を持つ立場になると必須の動機付けや、組織の長として良い方向に誘導したい個人の意思決定など。心理学などの社会科学から得られる知見を組織の経営にあてはめるとどうなるかを知ることができます。

 

ヒト・モノ・カネの「モノ」マーケティングはこれ1冊

フィリップ・コトラー他『マーケティング・マネジメント』

「“これ1冊”って言って確かに1冊やけど1000ページもありますやん」という方、これに関しては同感です。通勤電車が書斎の(日野)にとって持ち歩けない本というのはとても困ります。
ただ、ある年の夏休みに思い切って一気読みしました。持ち歩けない故の一気読みです。
一気読みの結果、当然すべてを理解はできていませんが、全体の把握ができ、マーケティングに関しては他に買う必要はないと実感しました。

全22章あり、各章における論点の設定と、その論点に関する具体的な事例の充実度。事例は欧米にとどまらず、そのまま使えたり、類似の日本企業を探すことにも役立ちます。

ホウタン的には、一度意を決して買って手許に置いて、もう一度意を決して通読してしまえば、マーケティングに関しては他に買う必要はないと思います。

ヒト・モノ・カネの「カネ」会計・財務①

K.G.パレプ『企業分析入門』

財務諸表分析の本です。

経営指標について書かれた本はたくさんありますが、それらの本を読んだだけではわかったようなわからんようなことになります。
この本もその点では変わりはなく、これだけで習得するというよりは、理解した上での振返り・まとめの本、という感じです。

この本の前にまずは日商簿記3級をしっかり理解しましょう。日商簿記3級の試験は簡単ですが、内容は奥深いものです。
会計事務所の方は「2級はいらんから3級は常に100点とれるくらい理解しろ」とよくおっしゃっていました。(工業簿記つかうクライアントがいなかったからかもしれませんが

 

ヒト・モノ・カネの「カネ」会計・財務②

マッキンゼー・アンド・カンパニー他『企業価値評価』

バリュエーションの本です。
企業価値とは何で、どのように算定するかの本です。

上巻・下巻の2冊で900ページ超、すべてを読み込み血肉とするのは困難ですが、M&Aに関わるときには最低限の言葉や考え方は理解しておく必要があります。
実際に価値算定は会計士等のアドバイザーに依頼するしかないのですが、アドバイザーの言うことを理解・評価できるだけの知識がないと、いいようにやられます。(法律を知らないと弁護士の言うことが理解できないのと同じですね

 

ヒト・モノ・カネの「カネ」会計・財務③

リチャード・ブリーリー他『コーポレート・ファイナンス』

ファイナンス、金融工学の世界です。
一時期ほどの重要性は無くなったように感じます。(リーマンショック以前にはすべてをコントロールできそうな万能感を纏った言葉でしたが、

こちらも上巻・下巻の2冊で、②よりさらに大きな約1300ページとなっています。
すべて読み込む時間があれば、TAC社や大原社の日商簿記1級講座を受講して、演習問題を何度も何度もこなしながら、商業簿記の神髄や意思決定会計の基礎を頭と手に叩き込むほうが有益だと思います。(この意味で有益なのは税理士試験の簿記論ではなく日商簿記1級です。
そのうえで実務上の必要に迫られて辞書的に参照しながら使う物であって、これら①②③の本だけで理解するのは不可能では、ないかと、考えてます。

 

経営学の総合問題「(競争)戦略」は2冊

①M.E.ポーター『競争の戦略』

②M.E.ポーター『競争優位の戦略』

ファイブフォース、3つの基本戦略(コストリーダーシップ、差別化、集中)、製品ライフサイクル(導入期、成長期、成熟期、衰退期)など、経営学と聞くと最初に思い浮かぶようなフレームワークがいくつも出てきます。
1980年が初版のようですが、2020年のいまでも、戦略を理屈づけようとするときにはまずはここから始まっているものが多いように思います。

経営学の入り口としてドラッカー『現代の経営』が挙がっていましたが、このポーターの2冊も同じように、読んでいて興奮を感じます。
どちらもとっつきやすく面白いのですがこのふたつだけでは薄っぺらいものになるように思います。
入口にドラッカー、出口にポーター、中身はヒト・モノ・カネの6冊があって、その土台にバーバラ・ミント、というふうに、中身と土台がないと、
提案に対してちょっと突っ込まれて返す言葉が無くなるような。
経営者との共通言語なだけに、面白いところ(ドラッカーとポーター)だけをかじってるようでは逆効果かもしれません。


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