古典ブックガイド
2020年4月18日から投稿の【0218】古典を読むで列挙した古典、
近世以前の日本という趣きのある、
- ザ・古典『論語』、
- 仏教の経典(代わり?)として『スッタニパータ』、
- 日本の古典として『古事記』を挙げ、
前回に明治以降に大きな影響を及ぼした西洋から
- 『聖書』と、
- ギリシャ思想の代表としてのプラトンの著作から『ソクラテスの弁明』『饗宴』『法律』
上記の古典(論語、スッタニパータ、古事記、聖書、ギリシャ思想(の便宜的な代表としてのプラトン))から【0222】と【0223】の2回に亘り、(日野)によるセレクションを書きましたので、ここにまとめておきます。
このときはまだ読んでいないので書けなかったプラトン『饗宴』『法律』の2冊はもとより、
『日本書紀』や『源氏物語』も、加えられたらいいなあと思っています。
そして、いつかは『コーラン』も、マルクス・エンゲルスにレーニンも、
と、想いは膨らむ一方です。
ザ・古典 『論語』
金谷治訳注『論語(ワイド版岩波文庫)』
原文・読み下し文・現代語文がそろっている物の中で、書店で読み比べてみていちばん読みやすかったのが、これだったので選択。
読みやすさにもいろいろありますが、余白・バランス・字の大きさ・紙の厚さみたいなところが大きかったように思います。そういう意味で、(通常の)岩波文庫ではなくワイド版を選びました。
岩波文庫は読むのがつらいお目目になりつつありますが、このワイド版は文字が大きくてたすかります。
ちなみに、この『論語』、興味を持って調べようとすると、諸子百家の話になって“~子”がたくさん出てきて情報の整理が追いつかなくなります。
そんなときには森三樹三郎『中国思想史(レグルス文庫)』がおすすめです。
『論語』で“先生”として登場する孔子から連なる孟子・荀子、そのアンチテーゼとしての老子・荘子、さらに…、と知的興奮を味わいながら諸子百家を網羅的に俯瞰することができ、頭の中がすっきりと整理されます。
仏教の経典(の代わり)として 『スッタニパータ』
中村元訳『ブッダのことば-スッタニパータ(ワイド版岩波文庫)』
これを選んだ理由は簡単です。白取『勉学術』で挙げられていたからです。
“ブッダの言葉は最古経典として知られているスッタニパータにまとめられている。これは『ブッダのことば』(岩波文庫)として文庫本になっている。<白取春彦 『勉学術』p110>“
結果これを選んでまちがいでなかったと思っています。註や解説も充実。
本文のみ読むもよし、2冊買って本文と註を見比べながらじっくり読むもよし、です。
なお、こちらもワイド版があるのでワイド版を選びました。
「日本の古典」として 『古事記』
西宮一民校注『古事記(新潮日本古典集成<新装版>)』
これを選んだのは『論語』と同じパターンで、書店で読み比べてみていちばん読みやすかったので選びました。ただ、ここでの読みやすさは、『論語』のときとはちがうものです。
本文は“まず、最善本である真福寺本を底本とし、他本による校訂をなし、和銅奏覧本に近づき得たと思われる「原文」を最初に構築した。ついで、このすべて漢字で記された「原文」に段落を設け、改行を加え、可能な限り奈良時代語で訓み下した漢字仮名交り文(歴史的仮名づかい)をもって、本書の本文とした<同書(西宮『古事記』) 凡例p9>”
この段落と改行がとても助かります。
契約書でも条番号ごとの見出しと条項ごとの改行があると読みやすいのと同じです。(英文契約は見出しと改行がないことでより読みとりにくいのですが、古文もそれに似た体裁の物が多くあったように思います。)
さらにこの西宮『古事記』では、訓み下し文のすぐ横に、ルビのような形で、口語訳がつきます。
例えば、上巻の本文の始まり“天地初めて発りし時に(…)”
のすぐ横に“天と地とが始まった時に”
と、難読漢字に付されるルビのように(しかも地の文は黒文字に対してこちらは茶色)ついてきます。
注が本文と同じ頁にあるのも参照しやすく、古文の教科書がすべてこのスタイル(本文のすぐ近くにルビと注)でしてくれたら、もっと早く古典にめざめていた、かも、しれません。(それじゃあ古文読解の練習にならないのかもしれないが、まずはどんな分野でも興味を持つことが大事で、何か入り口で「こうしたら読めるやん」「読めたらおもしろい」「がんばってでも読みたい」と思わせる工夫があると、40近くになってではなく高校生だった(日野)ももう少し真剣に国語の勉強してたかもなあと)
続いて西洋の古典『聖書』とプラトンです。
西洋の古典ならまずはこれ 『聖書』
フェデリコ・バルバロ訳『聖書』
これを選んだのは、『スッタニパータ』と同じパターンで、白取『勉学術』に講談社バルバロ訳がいいとあったからです。
“日本で入手できる聖書で注釈と参考図版がもっとも充実しているのは講談社から出ているバルバロ訳の聖書である。これを注釈と図版を含めて一通り読んでおけば、それ以降の理解度がまったく変わる。一日に三時間読むとすれば、聖書全巻を読み終えるのに約一ヵ月かかる<白取春彦 『勉学術』p105>“
今回この投稿を書くにあたって、あらためて何冊か見てみましたが、結果(日野)にとっては、このバルバロ『聖書』がいちばんでした。図版もよいのですが、各書の初めにある解説がコンパクトで必要十分ですし、なにより本文がよいです。(古文ではなく)現代文なので普通に読めて、かつ、口語でもない。ちょうどよい堅さ、という感じです。
ただ、持ち歩けるサイズではないので、新約だけ別のものを買い足したいとは思っています。
ちなみに、白取『勉学術』では、上記の引用箇所のすぐあとに、最低限これだけはという文書を、創世の書から始まり旧約で6つ、新約で5つ、挙げられています。(この部分だけでも定価の1,400円を支払う価値があると思っているので、引用はやめておきますが)
また、加藤『読書術』では “新約と旧約を合わせると論語よりはるかに大きい本”
としつつ“新約聖書を繰り返し、できるだけゆっくり読むこと”
を薦めています。<加藤周一 『読書術』p48参照>
聖書となると、ものすごい文書の量で、内容も最初はなかなか頭に入ってきませんが、この2つの記述(白取『勉学術』から“旧約で6つ、新約で5つ”と加藤『読書術』から“新約を~”)を合わせると、これだけは読んでおくべきという文書の量を相当減らせますので、まずは気軽に手に取ってみるとよいと思います。
西洋の古典の第二であるギリシャ思想(の便宜的な代表)としてプラトン
前期著作から『ソクラテスの弁明』
田中美知太郎 他訳『プラトン ソクラテスの弁明ほか(中公クラシックス)』
これを選んだのは『論語』『古事記』と同じパターンで、書店で読んでみて読みやすかったからです。『論語』『古事記』と違うのは“読み比べてみていちばん”ではなく、この一冊だけを手に取って見てそのまま買った感じで、他の物とは比較せず、一目ぼれというような選び方でした。
新書サイズで(500ページ超え2.5cmの厚さではありますが)文字の大きさ・配置に無理がなく、紙質もちょうどよいです。
加えて、冒頭に置かれている30ページ超の解説もとてもよいです。前期・中期・後期に分けたうえで主要著作を列挙されていたり、プラトンが『ソクラテスの弁明』を著作するまでの経緯があったりなど、プラトンに関して前知識ほぼゼロの状態からでも、挫折なくすんなりとその著作を読み進めることができる、良書だと思います。
さきほど厚さが2.5cmと書きましたが、解説が30ページ超、『ソクラテスの弁明』が90ページ弱で、合わせてもせいぜい120ページくらいなので、このくらいなら我慢して読み進めることができるのではないでしょうか。(書名の『ソクラテスの弁明ほか』の“ほか”として『クリトン』と『ゴルギアス』が収められていて、特に『ゴルギアス』が本書の2/3ほどを占めます、(日野)はまだ読めていません)
そしてそのせいぜい120ページを我慢してでも読み通せば、その果実として、哲学のなんたるかを感じることができるのではないかと思います。
中期著作から『饗宴』
(まだ読んでないので、別途)
後期著作から『法律』
(まだ読んでないので、別途)
以上、(日野)が選ぶ古典(論語、スッタニパータ、古事記、聖書、ギリシャ思想(の便宜的な代表としてのプラトン))のブックガイドでした。