【0222】古典を読む まとめとおまけ

21-読解する技法

前々回までで近世以前の日本という趣きのある、

  • ザ・古典『論語』、
  • 仏教の経典(代わり?)として『スッタニパータ』、
  • 日本の古典として『古事記』を挙げ、

前回に明治以降に大きな影響を及ぼした西洋から

  • 『聖書』と、
  • ギリシャ思想の代表としてのプラトンの著作から『ソクラテスの弁明』『饗宴』『法律』

を挙げてきました。

 

『論語』『スッタニパータ』『古事記』『聖書』『ソクラテスの弁明』と、ひととおり読んでみました。

感じること思うことはあります。
例えば前回も書いたように、なんとも捉えどころのなかった哲学というものが『ソクラテスの弁明』を読むことでなんとなく「ああ、哲学ってこういうものか」と思ったように、気付きもたくさんあります。

とはいえ、まだまだ、理解も応用もできません。

理解も応用もできないのですが、このレベルのものを一読でもしていると、新刊本に振り回されるということがなくなりました。

特に自己啓発本はまったく不要になりました。物事の考え方や正しい道のような話はもう何千年も前に、『論語』や『スッタニパータ』に書かれたところから変わっていないように思います。

あと、神話や哲学も、好きな分野でしたが、『古事記』『聖書』とプラトンがあれば、生きている間は消化しきれないほどの内容があるのでもうこれ以上いらないかな、という感じです。

 

さて、そんな素敵な古典ですが、古典ゆえに、いろいろの出版社から、いろいろの翻訳やいろいろの大きさで出版されています。

以下おまけですが、(日野)が選んだものを、理由なども交えながら、列挙してみます。

 

(おまけ)古典ブックガイド

ザ・古典 『論語』

金谷治訳注『論語(ワイド版岩波文庫)』

原文・読み下し文・現代語文がそろっている物の中で、書店で読み比べてみていちばん読みやすかったのが、これだったので選択。

読みやすさにもいろいろありますが、余白・バランス・字の大きさ・紙の厚さみたいなところが大きかったように思います。そういう意味で、(通常の)岩波文庫ではなくワイド版を選びました。

岩波文庫は読むのがつらいお目目になりつつありますが、このワイド版は文字が大きくてたすかります。

ちなみに、この『論語』、興味を持って調べようとすると、諸子百家の話になって“~子”がたくさん出てきて情報の整理が追いつかなくなります。
そんなときには森三樹三郎『中国思想史(レグルス文庫)』がおすすめです。
『論語』で“先生”として登場する孔子から連なる孟子・荀子、そのアンチテーゼとしての老子・荘子、さらに…、と知的興奮を味わいながら諸子百家を網羅的に俯瞰することができ、頭の中がすっきりと整理されます。

 

仏教の経典(の代わり)として 『スッタニパータ』

中村元訳『ブッダのことば-スッタニパータ(ワイド版岩波文庫)』

これを選んだ理由は簡単です。白取『勉学術』で挙げられていたからです。

“ブッダの言葉は最古経典として知られているスッタニパータにまとめられている。これは『ブッダのことば』(岩波文庫)として文庫本になっている。<白取春彦 『勉学術』p110>“

結果これを選んでまちがいでなかったと思っています。註や解説も充実。

本文のみ読むもよし、2冊買って本文と註を見比べながらじっくり読むもよし、です。

なお、こちらもワイド版があるのでワイド版を選びました。

 

「日本の古典」として 『古事記』

西宮一民校注『古事記(新潮日本古典集成<新装版>)』

これを選んだのは『論語』と同じパターンで、書店で読み比べてみていちばん読みやすかったので選びました。ただ、ここでの読みやすさは、『論語』のときとはちがうものです。

本文は“まず、最善本である真福寺本を底本とし、他本による校訂をなし、和銅奏覧本に近づき得たと思われる「原文」を最初に構築した。ついで、このすべて漢字で記された「原文」に段落を設け、改行を加え、可能な限り奈良時代語で訓み下した漢字仮名交り文(歴史的仮名づかい)をもって、本書の本文とした<同書(西宮『古事記』) 凡例p9>”

この段落と改行がとても助かります。
契約書でも条番号ごとの見出しと条項ごとの改行があると読みやすいのと同じです。(英文契約は見出しと改行がないことでより読みとりにくいのですが、古文もそれに似た体裁の物が多くあったように思います。

さらにこの西宮『古事記』では、訓み下し文のすぐ横に、ルビのような形で、口語訳がつきます。
 例えば、上巻の本文の始まり“天地初めて発りし時に(…)”のすぐ横に“天と地とが始まった時に”と、難読漢字に付されるルビのように(しかも地の文は黒文字に対してこちらは茶色)ついてきます。

 注が本文と同じ頁にあるのも参照しやすく、古文の教科書がすべてこのスタイル(本文のすぐ近くにルビと注)でしてくれたら、もっと早く古典にめざめていた、かも、しれません。(それじゃあ古文読解の練習にならないのかもしれないが、まずはどんな分野でも興味を持つことが大事で、何か入り口で「こうしたら読めるやん」「読めたらおもしろい」「がんばってでも読みたい」と思わせる工夫があると、40近くになってではなく高校生だった(日野)ももう少し真剣に国語の勉強してたかもなあと

–次回につづく–

21-読解する技法


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