【0221】古典を読む 4 of 4

21-読解する技法

前回まで、ザ・古典である『論語』、
仏教の経典(代わり?)として『スッタニパータ』、
日本の古典として『古事記』を挙げてきました。

近世以前の日本、という感じでしょうか。
『古事記』は明治以降に大復活しますが

 

加藤『読書術』では、ここまでの近世以前の日本に影響を与えた上記の書に続いて、
近現代の日本に大きな影響を及ぼしている西洋の書が挙げられています。

一方、明治以後の日本は、西洋からの強い影響を受けつづけて今日にいたっています。西洋からの影響は、さまざまの著者と本を通してはいってきたのですが、その源である古典は、申すまでもなく第一に聖書であり、第二にギリシャ思想を代表するいくつかの本であると言ってよいでしょう。なぜならば、西洋の文化がほかの文化、たとえば中国やインドの文化と違うのは、第一にそれがキリスト教文化であるということ、第二にキリスト教文化と密接に関係しながら、たえずヨーロッパ精神の形成に働きつづけてきたギリシャの影響ということになるだろうからです。

加藤周一 『読書術』p47 下線は(日野)による>

西洋の古典となると、『聖書』は当然という感じでしょう。
もうひとつ挙げられている、ギリシャ思想のほうは馴染みがありません。

そこでここでは、聖書は置いておいて、ギリシャ思想のほうをもう少し掘り下げておきます。

西洋思想のもう一本の柱はギリシャです。(…)
キリスト教の場合と違って、ギリシャの思想が一冊の本に要約されているとは言いがたいでしょう。ある人は、ソクラテス(…)またある人は、アリストテレス(…)しかしまた、おそらくプラトンをあげることもできるでしょう。西洋思想の一つの特徴は、精神と肉体、観念と物質、主観と客観、形と素材、概念と実際などの対立をするどく意識し、その関係をつきとめることにあると考えられるからです。そういう対立のするどい意識は、プラトンに典型的に現れています。

加藤周一 『読書術』p49 下線は(日野)による>

ギリシャ思想というと、たくさんの哲学者が出てきます。

『蔭山のセンター倫理』を見てみると、太字にされている名前だけ順に拾ってみても

タレス、ピュタゴラス、ヘラクレイトス、デモクリトス、プロタゴラス、ゴルギアス、、エソクラテス、プラトン、アリストテレス、エピクロス、ゼノン、…

たくさんの、かつ馴染みにくい名前が並びます。

 

加藤『読書術』ではそんなギリシャ思想の代表として仮に便宜のためと断った上でプラトンひとりまで絞ってくれています。

ギリシャ思想の代表的な思想家がだれであるかを論じることは、ここではできませんし、そもそもそういうことを論じて、一人の思想家や一冊の本を見つけだそうとすることに、どういう意味があるかも疑わしい限りです。しかし、さしあたっての便宜のため、仮にそれをプラトンによって代表させることにしておきましょう。

加藤周一 『読書術』p49 下線は(日野)による>

じゃあ、プラトンを読みましょう、となるわけです。
そこでプラトンが書いた本をさがすわけですが、プラトンひとりにしても大量の著書があります。
以下に列挙してみます。

前期著作『カルミデス』『ラケス』『リュシス』『ソクラテスの弁明』『クリトン』(…)
中期著作『饗宴』『パイドン』『国家』『パイドロス』(…)
後期著作『パルメニデス』『テアイテトス』『ソピステス』(…)『法律』『書簡集』ほか

プラトン 『ソクラテスの弁明ほか』p3 下線は(日野)による>

このように大量の著書があるなかで、(日野)は前期・中期・後期のそれぞれから1冊ずつ選ぶことにしました。

具体的には、前期から『ソクラテスの弁明』、中期から『饗宴』、後期から『法律』を選んで手許に揃えました。

なぜその3冊にしぼれたのか、理由はわりと明解です。
何度か参照している『蔭山のセンター倫理』でプラトンを見てみると、

プラトン(前427~前347)

ソクラテスの弟子。師の死後、哲学研究機関「アカデメイア」を設立。ピュタゴラスの影響も大。著書は『ソクラテスの弁明』『饗宴』など多数。

蔭山克秀 『蔭山のセンター倫理』p33 下線は(日野)による>

プラトンの著書として『ソクラテスの弁明』『饗宴』が挙げられています。
教科書に載るレベルで、プラトンといえば『ソクラテスの弁明』『饗宴』ということですから、
「プラトン読んだことあります」というにはこの2つ、押さえておきたいところです。

さいわい、『ソクラテスの弁明』は前期著作、『饗宴』は中期著作とわかれていたので、
2冊とも選ぶことができました。

これで前期・中期は押さえたのであとは後期著作からです。

では、と後期著作群を眺めていると『法律』という文字があります。
そうです、後期から『法律』を選んだのは、単純にタイトルにひかれてです。
現代の法律事務を扱う者として『法律』と名付けられると、食指が動きます。

こうして3冊(正確には3タイトル4冊)を選びました。
まだ『ソクラテスの弁明』しか読めていませんが、この1冊だけでも、正義とは何かを掘り下げていく過程に
「ああ哲学ってこういうことだったのか」ということを感じることができました。

哲学の解説書も記憶にあるだけで5冊くらいは読んだように思いますが、
哲学とはなんとも捉えようのないものでした。

(日野)にとってそのような捉えようのないものであった哲学を、
プラトンから1冊読んだだけで「なんとなくこういうものかな」と感じることができた、
この感覚は、解説書をあと何冊読んでも得られなかったように思います。

–次回につづく–

21-読解する技法


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