【0250】法律学の基本書を読む 10 of 10

21-読解する技法

【0243】法律学の基本書を読む 3 of 10から【0245】同 5 of 10まで具体例を挙げ、

そこから特徴を抽出して仮説を立て検証を行ったのが【0246】同 6 of 10【0248】同 8 of 10です。

その結果が前回【0249】の冒頭に掲げた表です。

憲法、行政法、商法と定番できましたが、民法で大胆な提案となっていました。

この流れで、残り、3法、
前回に刑事法分野(刑法・刑事訴訟法)を見ましたので、

今回は民事法分野の残り民事訴訟法を見ていきます。

これまでと同様、まずは愛知県弁護士会法科大学院委員会 編『入門 法科大学院』をよりどころとして進めていきます。

 

六法のなかで最後となってしまった民事訴訟法です。

かつての(日野)、

『入門 法科大学院』で“執筆者は元裁判官で(…)実務家の視点から”との記載に魅力を感じて藤田広美『講義 民事訴訟』を基本書として選びました。

いまや“学説の主流となった新訴訟物理論(新説)”を提唱された新堂幸治『新民事訴訟法』や
そのような状況でも“実務定説である旧訴訟物理論(旧説)の立場から緻密な理論を展開”する伊藤眞『民事訴訟法』も
どちらも魅力的ですが、“辞書的”の位置づけでしょうか。

前者(新堂『新民事訴訟法』)は、民法における山本敬三『民法講義』や潮見佳男『ライブラリー基本講義』『プラクティス民法』、
後者(伊藤『民事訴訟法』)は、商法における江頭憲治郎『株式会社法』『商取引法』のような印象です。
特に新堂『新民事訴訟法』は“辞書的”とするにもオーバースペックな内容です。

以上のように、
民事訴訟法においては、藤田『講義 民事訴訟』を基本書としてきたわけです。同じころ民法は近江『民法講義』全7巻が基本書でした。

前々回【0248】に、民法において近江『民法講義』は“基本書(コンパクトに凝縮)”から“基本書(辞書的)”に移動し、
基本書(コンパクトに凝縮)は我妻ダットサンとしました。

それは、基本書とは“よりどころとする大もと”であり、
イメージで言うと”わからない部分は他の本に飛んでいって、理解したらまた「基本書」に戻ってくる、基地のようなもの”だと整理できたからです。

この流れから、刑法・刑事訴訟法の基本書を考え直したように、

民事訴訟法でも考え直しを行います。

 

刑事法のところで“前田雅英氏だと入門~刑法総論・各論~刑事訴訟法まで同一の著者で揃う”魅力を書きましたが、民事訴訟でも同じ考えが当てはまります。

 

(日野)が民事訴訟法の基本書として藤田『講義 民事訴訟』を選んだのは、(“執筆者は元裁判官で(…)実務家の視点から”ということに加えて)民事保全、民事訴訟、民事執行、破産・再生まで藤田広美氏で揃うからというのが大きな理由です。

同一の著者で民事手続きの領域を一貫した考え方で読めるのが大きな魅力です。

 

一方で、刑事法においては大谷『~入門』、井田『~入門』や前田『~要点』のように刑事法分野の全体を一冊で概観できる本がありましたが、保全・訴訟・執行・倒産を一冊で概観できる本がなかなか見つかりません。

 

単著でいうと、中野貞一郎『民事裁判入門 第2版』、青林龍『標準民事手続法』の二択です。

前者は、3版以降は保全・執行が抜き出され、2冊で全体像になってしまった上に、2冊揃えても倒産法の記載がなくなってしまいました。著者が故人となっており、今後の改訂は見込めません。

後者は、保全・執行が薄すぎるのと倒産法が抜けています。今後に期待したいところです。

いろいろ見比べた結果、単著は諦めて有斐閣アルマ『民事手続法入門』を選びました。

 

見直し後、民事訴訟法の基本書は以下のとおりです。

古典

基本書(コンパクトに凝縮)

基本書(辞書的)

兼子一『民事訴訟法』

佐藤鉄男 他『民事手続法入門』

藤田広美『講義 民事訴訟』

 

 

藤田広美『民事執行・保全』

 

 

藤田広美『破産・再生』

 

–次回につづく–

21-読解する技法


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