【0243】法律学の基本書を読む 3 of 10

21-読解する技法

【0239】御社は、電子契約できますか? 1 of 4から前回まで、文理解釈に関連して、電子契約の話題を挟みました。

閑話休題、【0238】の続きです。

法律学の基本書を読むと題しながら、【0238】法律学の基本書を読む(おまけ) 法律学の古典を読む(おまけ)では先に古典を挙げましたが、
今回からいよいよ題名のとおり基本書を挙げていきます。

おさらいしておくと、【0234】法律学の基本書を読む 2 of に以下のように書きました。

社会の情勢に合わせて変わっていく法律に対して、
もはや更新されることのない古典に依って実務をおこなうのは無理があります。

そこで我々法務担当者は、古典ではなく、基本書を使います。
基本書を定義してから各法の基本書を紹介する順序を想定していましたが、

(中略)

この段階で基本書とは何かを定義するのはむずかしいので、
先に基本書とされている具体的な書籍を挙げながら、
その具体例の特徴をまとめることで帰納的論法によって、
基本書とは何かを結論づけたいと思います。

ホウタンは古典ではなく基本書を使うのだといいながら、
基本書とは何か、明確に書かれたものは見つからず、定義できていません。

そこで、一般的に基本書とされている具体的な書籍を挙げながら、帰納的に基本書とは何かを考えていきます。

そうすると、具体的な書籍をどう選ぶかが重要になります。

愛知県弁護士会法科大学院委員会編『入門 法科大学院』という本に、
“各科目ごとの学修メソッド”という章があり、憲法・民法など基本六法を含む司法試験の試験科目ごとに“法科大学院生の本棚”という項目が設置されています。
その“法科大学院生の本棚”を拠りどころとして、基本書の具体例を挙げていきます。

ちなみに、この本『入門 法科大学院』自体がとても優れていて、版を重ねていかれることをねがっています

 

まず憲法です。

基本書は芦部信喜『憲法』が定番です。

『入門 法科大学院』でも一冊目に紹介されています。
ただ、あまりにも芦部『憲法』が強い(?)ので、
(日野)は野中俊彦他『憲法Ⅰ・Ⅱ』、いわゆる四人組を採りました。
こちらは『入門 法科大学院』では“辞書のように使う本”と書かれています。

いまとなっては素直に芦部『憲法』で充分だったと思います。
ただ芦部『憲法』、これはこれで、非常に簡潔に記述されているので、
いわゆる行間を読むことを要求されます。

『入門 法科大学院』に書かれていますし、芦部『憲法』のまえがきに“行間を読むために『憲法学Ⅰ』『憲法判例を読む』を参照してほしい”旨、ご本人が書かれています。

『憲法学Ⅰ』と『憲法判例を読む』は【0238】で憲法の古典として挙げた本ですね。

ヨコ軸を古典、基本書、基本書は定番と辞書的に分けて並べるとこうなります。

古典

基本書(定番)

基本書(辞書的)

芦部信喜『憲法学』、『憲法判例を読む』

芦部信喜『憲法』

野中俊彦 他『憲法Ⅰ・Ⅱ』

――

続けて、公法分野を先に済ませましょう。
行政法を見てみます。

基本書は櫻井敬子他『行政法』が定番です。
櫻井他と書くとわかりにくいですが、櫻井敬子・橋本博之、いわゆるサクハシですね。

(日野)はここでも定番を避けて、より詳しい塩野宏『行政法』を採りました。

宇賀克也『行政法概説』もよく挙げられますが、塩野『行政法』と宇賀『行政法概説』を書店で見比べた結果、塩野『行政法』のほうが(日野)に合いました。
どちらが良い悪いではなく相性の話だと思います。

憲法のときと同じく、
ヨコ軸を古典、基本書(定番・辞書的)に分けて並べるとこうなります。

古典

基本書(定番)

基本書(辞書的)

田中二郎『行政法』

櫻井敬子 他『行政法』

塩野宏『行政法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』

憲法も行政法も、定番を避けてより詳しいものを選んでいたのですが、
いま考えると基本書(辞書的)のほうは、四人組『憲法』も塩野『行政法』も、
明らかにオーバースペックです。

実務で使うこともほぼなく、
多くのホウタンにとって公法分野は、自社の事業を規制する当局の
行動規範を理解することが大きな目的になるはずなので、
芦部『憲法』サクハシ『行政法』で概要をつかむことが重要だと考えています。

 

–次回につづく–

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