【0154】読解力の向上に資すること、その手がかり  3 of 8

21-読解する技法62リスク管理, 63意思決定, 77一般スキル

–前回までのあらすじ–

【0140】から【0149】まで、「なぜ読解する技法」をテーマとして取り上げていくのかということを書いてきました。

ここまでは深堀りをする理由であって、今回からいよいよ読解する技法について深堀りしていくわけです。

【0147】のなかで“「読む」は言語の四技能のひとつ”と書いていて、「読む」ということを深掘りするのであれば現代文読解に進めばいいところですが、ひと呼吸おきましょう。

気付いた点に注力するのでは「木を見て森を見ず」となります。

「鳥の目、虫の目、魚の目(それぞれ、マクロ、ミクロ、トレンドの視点)」ともいわれます。(出典はわかりませんが、

まず俯瞰・鳥瞰してみるというのは、分析の基本動作でもあります。

分析とは、「物事の実態・本質を正しく理解するための作業」の総称だと筆者は考えている。(…)ところで、われわれは「何のために」分析をするのだろうか。それは、「正しい認識・判断」により「正しい対応」をするためである。世の事象・現象は、いろいろな要素が輻輳し、生成の過程や因果関係が複雑に入り組んでいる場合が多い。したがって表面の事象だけを見ていたのでは判断を誤り、誤った対応・行動を招く危険性がある。

後正武 『意思決定のための「分析の技術」』p2-3 下線は(日野)による>

この引用では、「複雑に入り組んでいる世の事象に正しく対応するには分析をして本質を正しく理解しなければならない」と言っています。

では、分析とは何をするのかというのが同書から次の引用です。

分析の基本は、「大きさを考える」、「分けて考える」、「比較して考える」、「時系列を考える」の四つである。そして、そのバリエーションとして「バラツキを考える」、「プロセスを考える」、「ツリーで考える」という工夫が生まれる。さらに、自然科学と違って、「人間の問題」や社会の現象は、複雑に入り組んだ事象を含み、かつ「ファジーで不確定・不確実な要素」を積極的に取り扱っていかなければならない。そのためには、それらを取り扱う「枠組みなどの工夫」が必要になる。この分析の体系を(後略)

後正武 『意思決定のための「分析の技術」』p6 下線は(日野)による>

この引用文、なかなか一読して入ってこない文章となっていて、“基本”の4つに“バリエーションとして”の3つまでは読み取れたとして、そこから第三文“さらに~”と続くころには第一文、基本となる四つが見落とされることになりそうです。

実際には図示されているので理解できるのですが、それでも基本の四つ「大きさを考える」、「分けて考える」、「比較して考える」、「時系列を考える」があれば充分で、むしろこの四つこそが分析であって、あとの3つなり5つなりは不要であったように思います。

こう不要なことが足されてしまうのは、難しく読み取りにくい書が尊重された時代の名残のように感じますが、いかがでしょう

 

(日野)が認識している“分析の基本は、「大きさを考える」、「分けて考える」、「比較して考える」、「時系列を考える」の四つであ”ります。

この「大きさを考える」、「分けて考える」、「比較して考える」、「時系列を考える」を基本四動作とすると、その基本四動作のいちばんめが「大きさを考える」です。

この「大きさを考える」こそが今いわんとしている木を見る前に森を見る話しを指しています。

 

同書にある「大きさを考える」はどうなっているか。次の引用部分であると思います。

大きさを論ずるうえで鍵となる考え方に「大きさの程度」(オーダー・オブ・マグニチュード)という言葉がある。何事によらず、内部論理の緻密さや形式的な整合性を論ずる前に、全体としての大きさの程度、施策の利きの程度をおおまかに把握して、まず重要度の判定をし、そのうえで重要度の順に応じて、あるいは大きなところのみ手をつける、という考え方である。

後正武 『意思決定のための「分析の技術」』p6 下線は(日野)による>

この引用部分でも、“(オーダー・オブ・マグニチュード)”とか、下線部分の間にある“施策の利きの程度”という部分はノイズのようなものと思っていて、それを取り除くと、

「大きさの程度」:何事によらず、内部論理の緻密さや形式的な整合性を論ずる前に、全体としての大きさの程度を大まかに把握する。全体を把握した上で優先順位をつける、という考え方

ということになると理解しています。

 

さて、(日野)は、この引用にある“全体としての大きさの程度をおおまかに把握”することを「風呂敷を広げてみる」といっています。
広げて敷き置いた風呂敷を全体として、その全体に見立てた風呂敷の上に構成要素となる物を並べて見る/ご覧にいれるイメージです。
「風呂敷を広げる」は、一般的には「大言壮語」の意なのですが、以下、「風呂敷を広げる」を「何事によらず、内部論理の緻密さや形式的な整合性を論ずる前に、全体としての大きさの程度を大まかに把握する。全体を把握した上で優先順位をつける、という考え方」という意味で使用します

 

今回のテーマ「読解力の向上に資すること、その手がかり」のなかで広げてみる風呂敷はふたつあります。

風呂敷のひとつめは、「「読む」の位置づけ」 、
風呂敷のふたつめは、「読解を考える手がかり」 です。

–次回につづく–


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