【0153】読解力の向上に資すること、その手がかり  2 of 8

21-読解する技法77一般スキル

–前回までのあらすじ–

「読み書きそろばん」という慣用表現があり、文字通りであれば、「文字の読み書きと四則演算ができる」ということでしょうが、2000年代後半のこと“英語と会計とIT”や“ファイナンス、IT、英会話”が現代の読み書きそろばんといわれていて、資格取得に苦しむなかで苦し紛れのような、一発逆転に賭けるように、一時的な流行のような「英語・会計・IT」に感化されてUSCPAなんて取ろうかと思ったりしていました。

勝間和代『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』にとりあげられた「英語・会計・IT」が現代の読み書きそろばんであったとして、それをできることの証明にUSCPAを目指すなどというのは完全に論理の誤りですね。

  • (規範定立)「英語・会計・IT」ができれば年収10倍
  • (あてはめ)USCPAがとれれば、英語と会計の力を証明できる。試験はPC使うからもしかしてITも?!
  • (結論)USCPAがとれれば、年収10倍

「英語・会計・IT」ができても年収10倍になりません。
もう一度引用文を読み返してください。

ITは現代の読み書きそろばん

ITは、蒸気機関以来の発明といわれ、じわじわと私たちのライフスタイルを変えています。(…)いずれにせよ、ITを知らないと、読み書きできない時代になってきているのです。昔は読み書きそろばんといったものですが、それが全部ITに置き換わってきているのです。

どんなにコミュニケーション能力が優れていようが、どんなにきれいな文章を書けようが、ITでそれを再現できないと、生産性が高まらない時代です。

とにかく、英語と会計とITは、年収を上げていくための三大必須基礎スキルです。どんな仕事をしていようが、足腰として必要になります。

勝間和代 『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』p179 下線は(日野)による>

“三大必須基礎スキル”だと書かれています。必要条件であって、それだけではダメなのです。

この「英語・会計・IT」のようなものは、その時々にいろいろと出てきます。流行りのもの、ファッションのようなものだと感じています。
少し前にビッグデータと併せてデータサイエンティストという言葉が出てきました。この流れでは統計学が注目されました。

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このほか『日経ビジネス2013年9月30日発売号 no.1709』も表紙に”ビッグデータ”と

直近の流行でいうと、プログラムの読み書きが注目されています。

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振返ると、「英語・会計・IT」といっていた頃は、IFRSが強制適用になるかどうかと言われていたように思います。
このIFRSは、(日野)がビジネス上で初めて出会った流行語だったのかもしれません。

その後も、2011~12年には“ソーシャルネットワーキング”や“ゲーミフィケーション”

2013~14年は“ビッグデータ”や“データサイエンス”という言葉が、急に騒がれて浮かんでは消えていきました。

このような言葉を指す“バズワード”という単語さえ、このころに急浮上した急速に使われなくなったまさにこれこそ“バズワード”であったように記憶しています。

その後は“IoT”や“ブロックチェーン”、“FinTech”がよく聞かれましたがこれらはどういう経過をたどるのでしょうか。

 

とはいえ、それらをただ流行りのものだとバカにしているだけではありません。

少なくとも何が流行りなのか、トレンドを知っておくというのは重要なことで、そのためには先に挙げた週刊の三誌:ダイヤモンド、東洋経済、日経ビジネスは値打ちがあります。
あとは週刊文春・週刊新潮。通勤電車ではこれら週刊誌の中吊り広告がある車両を選ぶと満員で身動きの取れない手持ち無沙汰の時間も効率よく過ごせます、あの広告記事1枚のなかにその時の流行りが詰まっている

ビッグデータの統計学的処理やプログラムを書けることは大切です。トレンドを抜きにしてどちらも大切だと感じています。でも、それだけではだめなのです。

あくまでもそれは読み書きそろばん:“読むこと、書くこと、計算することの三つは、世の中で生活していくうえでぜひとも必要なもの”であって、それさえ揃えば直ちに年収10倍というものではないのです。

逆に、英語ができなくても統計学をしらなくてもプログラムを書けなくても、日本の平均年収の10倍以上の年収を受けている人は、確実にいます。

世の流れに乗ることは大切ですが、乗せられてはいけません。
たったひとつこれを身に付けると年収10倍、みたいなものはないのです。
焦らず、騒がず、本命の/やりたいことのためになることを一途に続けることが大切です。

余談ですが、ちょうどデータサイエンティストという言葉が雑誌などで特集されていたころに、(日野)の下に付いていた後輩が英文簿記BATICのコントローラーに合格したと聞きました。
さらなる成長への期待と、(日野)自身を含めて部内の人員とその保有スキル/業務の負担状況に我が社の現状も踏まえた上で考えて、
「次はコーポレートファイナンスやっといたら?」
と言ってみたところ、その後輩は「ファイナンス興味ないんで」と吐き捨てて、業務に戻っていきました。
それからしばらくすると、彼のデスクの上には統計学の本が2~3冊、並べられていました。
その後異動もあって詳しくは知りませんが、その彼などいまごろはPythonの構文をひたすら丸暗記などしているかもしれません。

【起】今回のテーマ 「読む」の位置づけ と 読解を考える手がかり

【0140】から【0149】まで、「なぜ読解する技法」をテーマとして取り上げていくのかということを書いてきました。

ここまでは深堀りをする理由であって、今回からいよいよ読解する技法について深堀りしていくわけです。

【0147】のなかで“「読む」は言語の四技能のひとつ”と書いていて、「読む」ということを深掘りするのであれば現代文読解に進めばいいところですが、ひと呼吸おきましょう。

気付いた点に注力するのでは「木を見て森を見ず」となります。

「鳥の目、虫の目、魚の目(それぞれ、マクロ、ミクロ、トレンドの視点)」ともいわれます。(出典はわかりませんが、

まず俯瞰・鳥瞰してみるというのは、分析の基本動作でもあります。

分析とは、「物事の実態・本質を正しく理解するための作業」の総称だと筆者は考えている。(…)ところで、われわれは「何のために」分析をするのだろうか。それは、「正しい認識・判断」により「正しい対応」をするためである。世の事象・現象は、いろいろな要素が輻輳し、生成の過程や因果関係が複雑に入り組んでいる場合が多い。したがって表面の事象だけを見ていたのでは判断を誤り、誤った対応・行動を招く危険性がある。

後正武 『意思決定のための「分析の技術」』p2-3 下線は(日野)による>

この引用では、「複雑に入り組んでいる世の事象に正しく対応するには分析をして本質を正しく理解しなければならない」と言っています。

では、分析とは何をするのかというのが同書から次の引用です。

分析の基本は、「大きさを考える」、「分けて考える」、「比較して考える」、「時系列を考える」の四つである。そして、そのバリエーションとして「バラツキを考える」、「プロセスを考える」、「ツリーで考える」という工夫が生まれる。さらに、自然科学と違って、「人間の問題」や社会の現象は、複雑に入り組んだ事象を含み、かつ「ファジーで不確定・不確実な要素」を積極的に取り扱っていかなければならない。そのためには、それらを取り扱う「枠組みなどの工夫」が必要になる。この分析の体系を(後略)

後正武 『意思決定のための「分析の技術」』p6 下線は(日野)による>

–次回につづく–


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