【0244】法律学の基本書を読む 4 of 10

21-読解する技法

一般的に基本書とされている具体的な書籍を挙げながら、帰納的に

基本書とは何かを考えていきます。

前回は公法分野(憲法、行政法)の基本書を挙げました。

古典

基本書(定番)

基本書(辞書的)

芦部信喜『憲法学』有斐閣、『憲法判例を読む』岩波書店

芦部信喜『憲法』

野中俊彦 他『憲法Ⅰ・Ⅱ』

田中二郎『行政法』法律学講座双書

櫻井敬子 他『行政法』

塩野宏『行政法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』

 

次に民事法分野です。
引続き、愛知県弁護士会法科大学院委員会 編『入門 法科大学院』が拠りどころとなります。

 

民事法分野は会社法から見てみます。

実務では、江頭憲治郎『株式会社法』が定番でしょうか。
調べものをしていると参照元が江頭『株式会社法』としてよく挙げられています。
『入門 法科大学院』では“渉外事務所や会社法を多く取り扱っている事務所の弁護士が最新の突っ込んだ問題を検討するときには、この本を参照することが多いようです。(…)院生がメインの教科書として使うのは、少し大変かもしれません。辞書的に用いる使い方が適しているように思われます”とされています。
憲法、行政法でもでてきました、“辞書的”な基本書です。

 

では“辞書的”ではない基本書はなにかというと、神田秀樹『会社法』です。
『入門 法科大学院』でも”広大な会社法の世界を見事なまでにコンパクトに凝縮(…)今、会社法で1冊だけ基本書を選ぶとすれば、この本”とされています。

 

江頭『株式会社法』は“辞書的”で、神田『会社法』は“見事なまでにコンパクトに凝縮”です。
憲法、行政法でも同じ位置づけでした。

見事なまでにコンパクトに凝縮された芦部『憲法』、サクハシ『行政法』
対して辞書的に使う四人組『憲法』、塩野『行政法』

 

そして、神田『会社法』のはしがき〔初版〕には、
【0235】法律学の古典を読む 1 of 2で会社法の古典として挙げた鈴木『会社法』に言及されています。

“鈴木竹雄先生の名著「会社法」は、筆者にとっても学生時代以来の愛読書であり、本書では、その伝統を引き継ぐよう努力した。”

その面からの相性もよいと思います。

 

――

さて、基本書論争では忘れられがちですが、
商法は会社法だけではありません。

実務では、商法総則・商行為法もとても重要です。

ただ、基本書論争では忘れられがちで、『入門 法科大学院』でも記載がないので、
この分野は完全に(日野)によるセレクションです。

基本書は近藤光男『商法総則・商行為法』(有斐閣法律学叢書)を挙げます。

古典と“辞書的”は会社法と同じ著者で、バンブー『商行為法・保険法・海商法』と江頭『商取引法』です。

 

前回の憲法・行政法と同様に、ヨコ軸を古典・基本書と並べてみます。
前回は基本書を定番と辞書的にわけましたが、よく当てはまる言葉が出てきたので、“定番”ではなく“コンパクトに凝縮”を使います。

 

古典

基本書(コンパクトに凝縮)

基本書(辞書的)

芦部信喜『憲法学』有斐閣、『憲法判例を読む』岩波書店

芦部信喜『憲法』

野中俊彦 他『憲法Ⅰ・Ⅱ』

田中二郎『行政法』法律学講座双書

櫻井敬子 他『行政法』

塩野宏『行政法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』

鈴木竹雄『会社法』法律学講座双書

神田秀樹『会社法』

江頭憲治郎『株式会社法』

鈴木竹雄『商行為法・保険法・海商法』法律学講座双書

近藤光男『商法総則・商行為法』

江頭憲治郎『商取引法』

 

憲法、行政法、商法と挙げてきました。

ただただ列挙していくことが目的ではなく、
特徴を抽出して、帰納的論法で基本書を定義することをめざしているわけですが、

何か見えてきたでしょうか、まだ何も見えないでしょうか。

次回、民事法分野を続けていきます。

 

–次回につづく–

21-読解する技法


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