【0249】法律学の基本書を読む 9 of 10

21-読解する技法

さて、ここまで、憲法、行政法、商法、民法と挙げてきました。

古典

基本書(コンパクトに凝縮)

基本書(辞書的)

芦部信喜『憲法学』有斐閣、『憲法判例を読む』岩波書店

芦部信喜『憲法』

野中俊彦 他『憲法Ⅰ・Ⅱ』

田中二郎『行政法』法律学講座双書

櫻井敬子 他『行政法』

塩野宏『行政法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』

鈴木竹雄『会社法』法律学講座双書

神田秀樹『会社法』

江頭憲治郎『株式会社法』

鈴木竹雄『商行為法・保険法・海商法』法律学講座双書

近藤光男『商法総則・商行為法』

江頭憲治郎『商取引法』

我妻榮 民法講義『1民法総則』『2物権法』『3担保物権法』

我妻榮 他『民法1 総則・物権法』

近江幸治 民法講義『1民法総則』『2物権法』『3担保物権』

我妻榮 民法講義『4債権総論 』『5-1債権各論 上巻』『5-2債権各論 中巻一』『5-3債権各論 中巻二』、我妻榮 『事務管理・不当利得・不法行為』

我妻榮 他『民法2 債権法』

近江幸治 民法講義『4債権総論』『5契約法』『6事務管理・不当利得・不法行為』

 

我妻榮 他『民法3 親族法・相続法』

近江幸治『民法講義7 親族法・相続法』

 

【0243】法律学の基本書を読む 3 of 10から【0245】同 5 of 10まで具体例を挙げ、

そこから特徴を抽出して仮説を立て検証を行ったのが【0246】同 6 of 10~前回【0248】同 8 of 10です。

その結果が上の表です。

憲法、行政法、商法と定番できましたが、民法で大胆な提案となりました。

 

この流れで、残り、3法、
刑事法分野(刑法・刑事訴訟法)と民事法分野の残り民事訴訟法を見ていきます。

ここまでで考え方は整理したものの、最初の拠りどころは愛知県弁護士会法科大学院委員会 編『入門 法科大学院』とします。

先に刑法、刑事訴訟法から。

 

かつての(日野)、
刑法は大谷實『刑法講義』、刑事訴訟法は田口守一『刑事訴訟法』を選びました。

大谷『刑法講義』は、『入門 法科大学院』で“今や学説上の主流となった結果無価値論(…)実務上は行為無価値。判例との親和性も高い”“古くは団藤、大塚と続いて大谷”という記述があったことから採りました。
結果無価値論と行為無価値論があり、まず行為無価値論を選び、
行為無価値論のなかで、書店で見比べると、“行為無価値論について次の世代の研究者”とされる井田良『講義刑法学・総論』がよかったのですが、当時まだ各論がなかったので、大谷『刑法講義』が勝ちました。

田口『刑事訴訟法』は、『入門 法科大学院』で“比較的穏当”とあったので選びました。正直なところ、ここまでくると何も考えてない、というのが実態です。

 

さて、これまでの(日野)は、刑法・刑事訴訟法においては、大谷『刑法講義』・田口『刑事訴訟法』を基本書としてきたわけです。同じころ民法は近江『民法講義』全7巻が基本書でした。

前回に、民法において近江『民法講義』は“基本書(コンパクトに凝縮)”から“基本書(辞書的)”に移動し、
基本書(コンパクトに凝縮)は我妻ダットサンとしました。

それは、基本書とは“よりどころとする大もと”であり、
イメージで言うと”わからない部分は他の本に飛んでいって、理解したらまた「基本書」に戻ってくる、基地のようなもの”だと整理できたからです。

この流れからすると、刑法・刑事訴訟法も考え直しです。

(日野)にとって、ホウタンにとって、刑事法分野がどの程度必要なのか、
大谷『刑法講義』2巻・1200ページ、田口『刑事訴訟法』480ページが“コンパクトに凝縮”といえるかどうかです。

 

(日野)にとって、ホウタンにとって、刑事法分野がどの程度必要なのかを考えます。

多くのホウタンにとって刑事法に携わる頻度は低いはずです。
頻度が低いことも関連して、いざ刑事事件となればホウタンの意見では足らず、直属の上司もその上の幹部たちも全員が弁護士の意見を求めるはずです。

 ホウタン『Aなのでaが結論です。』

 幹部たち『わかった。で、弁護士はどういっているか?』

こんな会話が思い浮かびます。

それを考えると、刑事法を深く理解する時間を、自社の事業に関連する業法に使うほうが良いと思います。
一般的なところは弁護士に任せて、自社に特有のところをきっちり社内で押さえます。

であれば刑事法はまったく不要かというとそうではなく、業法に刑事罰の規定があることからも、刑事法の全体像は知っておくべきです。

以上のことから考えると、刑事法分野に関しては、
刑法・刑事訴訟法とわけず刑事法分野の全体像を、できれば単著で、一冊でざっくりと、
把握することが大切だと考えます。

刑事法分野の全体像を一冊でとなると、ひとつめは、大谷『刑法講義』と同じ著者で大谷實『刑事法入門』が挙げられます。
たったの200ページ、A5サイズで厚さ1cmちょっとのとっつきやすさ(ちなみに、大谷『刑法講義』2巻と田口『刑事訴訟法』を3冊並べると厚さ約10cm)、全体をさっと一掴みできるコンパクトさが魅力です。
1cmちょっとのとっつきやすさに反して中身は濃く、これだけをざっと見て理解できるようなものではありません。
他の詳しい本で補足しながら、概要はここに詰まっている、まさに基地のような本です。

 

大谷『刑事法入門』の対抗馬を探してみました。
行為無価値論からは井田良『基礎から学ぶ刑事法(有斐閣アルマ)』ですが、
今回の発見は前田雅英『刑事法の要点』です。

個人的な感想ですが、前田『要点』には魅了されました。

結果無価値に分類されていたことから避けていましたが、前田『要点』を読んでから同じ著者の前田雅英『刑法総論講義』『刑法各論講義』を読むと、すんなり腑に落ちてきます。

前田雅英氏であれば刑事訴訟法(池田修=前田雅英『刑事訴訟法講義』)まで同じ著者で揃うことも魅力です。

ということで二択になります。

【行為無価値論】

古典

基本書(コンパクトに凝縮)

基本書(辞書的)

団藤重光『刑法綱要総論』

大谷實『刑事法入門』

大谷實『刑法講義総論』

団藤重光『刑法綱要各論』

 

大谷實『刑法講義各論』

平野龍一『刑事訴訟法概説』

 

田口守一『刑事訴訟法』

 

【結果無価値論】

古典

基本書(コンパクトに凝縮)

基本書(辞書的)

団藤重光『刑法綱要総論』

前田雅英『刑事法の要点』

前田雅英『刑法総論講義』

団藤重光『刑法綱要各論』

 

前田雅英『刑法各論講義』

平野龍一『刑事訴訟法概説』

 

前田他『刑事訴訟法講義』

 

行為無価値も結果無価値も、古典は団藤『綱要』と平野『概説』が並んでいるところがミソでしょうか。平野『概説』は刑訴法だけでなく刑法もすばらしいのですが、古典のほうは複数の観点があるほうがよいように思うので、こうしています。

(日野)は過去の自分の選択から翻って、【結果無価値論】のほうを採ってこのあとの記事を進めていきます。

 

–次回につづく–

21-読解する技法


このページの先頭へ