【0246】法律学の基本書を読む 6 of 10

21-読解する技法

さて、【0234】法律学の基本書を読む 2 of 10で、以下のように書きました。

この段階で基本書とは何かを定義するのはむずかしいので、

先に基本書とされている具体的な書籍を挙げながら、

その具体例の特徴をまとめることで帰納的論法によって、

基本書とは何かを結論づけたいと思います。

ここで一度立ち止まり、ここまで挙げてきた具体的な書籍からその特徴をまとめてみます。
ここまで挙げてきた基本書は次の表のとおりです。

古典

基本書(コンパクトに凝縮)

基本書(辞書的)

芦部信喜『憲法学』有斐閣、『憲法判例を読む』岩波書店

芦部信喜『憲法』

野中俊彦 他『憲法Ⅰ・Ⅱ』

田中二郎『行政法』法律学講座双書

櫻井敬子 他『行政法』

塩野宏『行政法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』

鈴木竹雄『会社法』法律学講座双書

神田秀樹『会社法』

江頭憲治郎『株式会社法』

鈴木竹雄『商行為法・保険法・海商法』法律学講座双書

近藤光男『商法総則・商行為法』

江頭憲治郎『商取引法』

我妻榮『民法総則 (民法講義 1)』

近江幸治『民法講義1 民法総則』

山本敬三『民法講義』

我妻榮『物権法 (民法講義 2)』

近江幸治『民法講義2 物権法』

佐久間毅『民法の基礎』

我妻榮『担保物権法 (民法講義3)』

近江幸治『民法講義3 担保物権』

道垣内弘人『現代民法』

我妻榮『債権総論 (民法講義4)』

近江幸治『民法講義4 債権総論』

潮見佳男『プラクティス民法』

我妻榮『債権各論 上巻 (民法講義5-1)』『債権各論 中巻一 (民法講義5-2)』『債権各論 中巻二 (民法講義5-3)』

近江幸治『民法講義5 契約法』

潮見佳男『ライブラリー基本講義』債権各論〈1〉契約法・事務管理・不当利得〈2〉不法行為法

 

我妻榮『事務管理・不当利得・不法行為』

近江幸治『民法講義6 事務管理・不当利得・不法行為』

 

近江幸治『民法講義7 親族法・相続法』

 

 

これらを眺めながら、基本書とはなにか、仮説を立ててみます。

1.全体を網羅して筋が通っている(体系立っている)

2.論点、争いのある個所が網羅されている(判例・通説が明記されている)

3.何度も読み返すことができる(コンパクトである)

4.現行法対応・重要判例がフォローされている(改訂が続いている)

 

1.~4.の仮説を検証してみます。

まずこの4つの仮説がどういうところから立てられたのか見ていきます。

 

1.全体を網羅して筋が通っている。(体系立っている)

ここまで挙げてきたすべてに共通します。
各法・各分野の全体が網羅されています。
各書の中に体系立った、一本の筋が通っています。

 

2.論点、争いのある個所が網羅されている。(判例・通説が明記されている)

この点もここまで挙げてきたすべてに共通します。

共通はしますが、“コンパクトに凝縮”と“辞書的”では論点あたりの反対説の数に差がでてくるはずです。論点もどこまでの深さで取りあげるのかにも差が出てくるでしょう。

できるだけ多くの論点が網羅的に載っている方が判断ミスは減りそうです。
網羅性の観点からは“辞書的”で挙げてきた物を選ぶ方が確実でしょう。

 

3.何度も読み返すことができる

これも3.と同じく“コンパクトに凝縮”と“辞書的”の差で、

3.論点の網羅性と競合する(二者択一となる)ところです。

 

4.現行法対応・重要判例がフォローされている(改訂が続いている)

この点で、ここまで挙げてきたものでは、会社法における鈴木『会社法』と神田『会社法』の差です。

前者は、著者が故人です。ご本人による改訂がされることはありません。
後者は、鈴木『会社法』をめざしながら、著者は現役です。
会社法は変化が多いので、毎年のように改訂されています。

鈴木『会社法』と神田『会社法』の差、言い換えると古典と基本書の差ということが言えます。

芦部『憲法』は基本書に置いていますが、この点からするとそろそろ古典とするべきかもしれません。

 

–次回につづく–

21-読解する技法


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