【0237】法律学の基本書を読む(おまけ) 法律学の古典を読む 2 of 2

21-読解する技法

前回【0235】で法律学の古典を挙げました。

少し、補足をします。

 

絶版となっている物も多く、きれいな物を入手するのが困難です。

書店で見かけて、内容が気に入れば、
その時に入手しておいたほうが良いです。

高いですけどね。

がんばってその時に入手しておいたほうが良いです。
年々入手しにくくなっています。

あの書店のあの棚にあったはずが、無くなってます。

 

書店にはないが、
どうしても欲しいとなれば、
前回にリンクを貼ったAmazonで購入するのが最も早いと思います。

絶版なのを欲しいものですから、足元見られます。値付けがひどいです。

商品の状態は記載薄く、どんな物が届くかわからないのに、定価の倍とか、

現状(2021年2月)だと、団藤『刑法綱要』がそういう状態です。

 

定価の倍の値付けがある
一方で、極端に安い値付けの物もあります。
例えば我妻『民法講義』、安いときは2~300円です。

これも気をつけないと、50年~60年前に発行の保管も適切でなかったのだろうと思われる、
ドロドロの物が届きます。

商品状態=良い、値段=200円、買った!
届いて開くとドロドロの、まもなく土に還るのかと思うような物が届いても、
ああ、「良い」のかな、これが「良い」のかな、古書の基準わからんもんな、
と思うと、返品もできません。

 

そういうわけで、
流通数も少なく、あっても高額で、
いまからすべてを揃えようというのは相当に苦労します。

そこで、すべてではなく、ホウタンとしての最低限を考えましょう。

 

まず、法律の絞り込みです。

前回の表では、
基本六法(憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法)+行政法
を列挙しましたが、
基本六法+行政法のすべてが必要ですか?という話です。

おそらく、ほとんどのホウタンにとって、民法だけで十分なはずです。

基本六法+行政法、それぞれの全体像は知っておくべきですが、
全体像を知っておけばよく、
古典から調べて解決の糸口を探るような営みは、弁護士に任せるべきでしょう。

基本六法+行政法とあったものが、ひとつに絞られました。

「なるほど、民法か。それならば我妻『民法講義』を求めよう」となるわけですが、
我妻『民法講義』だけで9冊あります。

9冊の内訳は。
1民法総則、2物権法、3担保物権法、4債権総論、5債権各論

5債権各論はさらに枝番がついて、5-1上巻、5-2中巻1、5-3中巻2、5-4下巻1
と分かれます。


民法の中でさらに絞り込みましょう。

民法の全範囲のなかで、ホウタンがよく使うのは、
「総則」、「契約総則」、「債務不履行」、「不法行為」ではないでしょうか。

業種によっても変わるでしょう。
不動産や金融であれば「物権」「担保物権」のほうが、重要かもしれません。

ただ、「総則」、「契約総則」、「債務不履行」、「不法行為」
は業種を問わず、すべてのホウタンに重要な分野だと思います。

それぞれ、我妻『民法講義』との対応を挙げると、
「総則」は1民法総則、
「契約総則」は5-1債権各論(上巻)、
「債務不履行」は4債権総論
に含まれます。

続いて「不法行為」、なのですが、
『民法講義』の最後である5-4債権各論(下巻1)は、
事務管理・不当利得までで終わっていて、
不法行為はありません。

『民法講義』に無いとなると、
同じ我妻氏の『事務管理、不当利得、不法行為』が欲しくなるところです。

(日野)は書店で迷いました。買っておくべきか否か。

迷いながら、『我妻・有泉コンメンタール民法』が近くにあったので、
『事・不・不』と『コンメンタール』とを見比べてみました。

その結果、「あ、『コンメンタール』で充分だ」
と感じたので、『事・不・不』を買うのはやめました。

 

さて、長くなりましたが、結論です。

前回に基本六法+行政法の古典を挙げましたが、
基本六法+行政法のすべてを揃える必要はなく、
民法だけで充分です。

民法であれば、
我妻榮『民法講義』全巻が欲しくなるところですが、
ホウタンにとって大事な(大事な大事な)「不法行為」が無いので、
『我妻・有泉コンメンタール民法』がよいのではないでしょうか。

ちなみにこの『我妻・有泉コンメンタール民法』は、今も改訂が続いていますが、
古典として我妻榮氏が書かれた物を求めているところなので、
改訂版を追いかける必要はなく、できるだけ初版に近いものがよいと思います。
(日野)が持っているのは第2版で、今回書店で『事・不・不』と見比べた物とは異なります。

『我妻・有泉コンメンタール民法』を手許に置いておいて、折々に参照しながら、
無理のない範囲で『民法講義』の内、自分(の業務)にとって必要な巻を
手許に揃えていく、というくらいがよいのではないでしょうか。

無理をして、高い古書を買う必要はないと思います。

幸い、有斐閣はオンデマンド版を出し続けてくださっているので、
格安の中古に勝負をかけるより、確実に状態の良い物が届いてしかも権利者に
報酬が還元される方を選ぶほうが、お互いにとって良いように思います。

 

–次回につづく–

21-読解する技法


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