【0021】意思決定とは その2

12-連載- ビジネス法務の実践12経営法務/戦略法務, 13予防法務, 14臨床法務, 62リスク管理, 63意思決定, 99引用

(追記)投稿当時は現在とちがい、ブログタイトルは「(名称準備中)が実践するビジネス法務」であり、管理人の名称は「(準備中)」でした。

ビジネス法務の実践 9 of 10

もう一度引用しておきます。


 経営者にとって、損失が確実な投資案件なら悩むことなくそのような選択をしなければいいのであって、経営者にとって真に問題になるのは、結果が不確実な場合だけなのである。

<小松伸多佳『成功するならリスクをとれ!』東洋経済新報社>

 何を選んでも結果が同じであれば意思決定は必要ないのです。しかし、利益を得る営みであるビジネスにおいて、「リスクがない=何を選んでも結果が同じ」ということはあり得ないのです。
選択肢があり、その肢ごとの実現可能性によって結果が異なる=結果にバラツキがある故に意思決定が必要なのです。
 言い換えれば、それがビジネス(=利益を得るための営み)である以上、意思決定は必ず付きまとう ということです。

 

 ここまでは意思決定時点から見てきましたが、同じことを、結果から時間を遡って見てみます。

 

 なんらかの意思決定のあと、その結果が失敗に終わったときには、その決定者は「なぜこんなことをしたんだ!!」「どうしてこんなことをしたんだ?!」と問われることになります。確実に言われます。

 リスクをとる以上その結果にはバラツキがあります、良いこともあれば悪いこともあります。でも、何かよくない結果が実現したとき(よくないときだけに)問われるのが、その意思決定の正しさです。

 正しいも何も、その時点では正しいと思った。というのが決定者の本音でしょう。でもそんなことを言ったところで誰も納得してくれません。
 ではどう答えればよいのか。責任を叫ぶ人たちはその罵倒のような言葉で何を問うているのでしょうか。
それは「その決定は漫然と行われたのか、それとも慎重に検討した上での決定だったのか」ということではないでしょうか。
「しっかりと説明できる程度に検討したのか」と問うておるのです。
 そうであれば答えも、その問いに対するものでなければなりません。

 

 その答えのために必要となるのが、Plan-Do-Seeの各段階における検討資料の内容です。

 

 意思決定の前段階(決定者によって決定されなければDoできないため)であるPlanの段階では次のような点を検証されます。それは、その当時考えられるすべての可能性を洗い出しているか。それぞれの選択肢の評価は正しいか。そのなかからひとつの肢の決定に至る思考過程は合理的か、です。

 次にDoの段階では、決定された内容に従って実行されているか。実行の内容は決定された範囲を逸脱していないか、ということが問われます。

 そして、Seeの段階では、適時適宜に検証をしているか、です。

なんらかの問題が起こった場合気づいた時点で対処しているか、または対処しようとしているか。その対処方法はしっかりと検討されているか。ということを問われます。

 

 

 これらは突き詰めれば、故意・重過失がなかったかの検証です。これは訴訟において行われる弁論と本質的に同じと思います。何を言いたいかというと、故意・重過失がなかったということを証明するためには、書面による証跡がなければならないということです。

 

 法務担当者の職務は、マネジメント層への助言です。そして、その助言を採用した結果発生するかもしれない危険から決定者を守るという営みもまた重要な職務のひとつなのです。

 

 


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