【0017】リスクとは その2

12-連載- ビジネス法務の実践62リスク管理, 99引用

(追記)投稿当時は現在とちがい、ブログタイトルは「(名称準備中)が実践するビジネス法務」であり、管理人の名称は「(準備中)」でした。

ビジネス法務の実践 5 of  10

 前エントリーで呈示した事例を再掲します。

 ビルから転落するという状況において、イ)3階建てのアパートの屋上から、日中に転落する場合 と、ロ)30階建てのビルの屋上から、深夜に転落する場合 では、どちらのリスクが大きいか。

 

 では考えてみましょう。
順番は逆になりますが、まず、ロ)の結果から見たいと思います。

 ロ)30階建てのビルの屋上から深夜に転落する場合。

想像できましたか?

その結果は、おそらく間違いなく「死」でしょう。

1階が3メートルあるとすると、30階では約100メートルです。地上に着くころには時速何キロメートルかわかりませんが、頭からでも足からでも、背中でもおなかでも、着地点が車が走る都会の道路でも田舎の田圃でも、まあまず即死でしょうね。

 

 次にイ)3階建てのアパートの屋上から、日中に転落する場合ですが、高さはロ)の場合の10分の1、約10メートルの高さです。着地時には時速50キロメートルほどになるようです。

 これはどうなるでしょうか。想像してみましょう。想像する人によって、いろいろの結果になるのではないでしょうか。

 ロ)と同じように死ぬかもしれません。でも生存例もあるようです。

 意外と無傷のこともあるでしょうか。骨折程度で済むのでしょうか。でも頭から着地したときは、生き延びたとしても重大な後遺症を残すかもしれません。

 また、日中なので、たまたま下を歩いていた人がいる可能性が出てきます。その方に激突するかもしれません。
このときは、その人がクッションになって自分は生存しながら、相手の方は亡くなってしまうかもしれません。

 もしかすると、落下地点を通過しそうになったバスが、急ハンドルを切って赤信号の交差点や商店街に突っ込んで横転するかもしれません。

 もう、考えたくないですが、とにかくいろいろな結果を考えることができるということを分かっていただければ充分です。

 

 さて、元々の質問を思い出してみましょう。イ)とロ)のどちらのリスクが大きいでしょうか、というものでした。

 このときに、リスクにはふたつの意味がある、ということを考慮しなければなりません。


リスク<risk>①危険。②商売などで損害を受ける可能性

<松村明 他『旺文社国語辞典 第九版』旺文社>

 まず、①の「危険」という意味でリスクを見たとき、よりリスクが大きいのは、ロ)の30階建てからのほうでしょう。
より大きな危険である「死」という結果が、ほぼ確実に起こるだろうと想定されるからです。

 次に、②の「損害を受ける可能性」という意味でリスクを見たとき、よりリスクが大きいのは、イ)の3階建てからのほうです。
もう書きませんが、さまざまな結果が想定され、それぞれの結果が発生する可能性は異なります。結果にバラツキがある、ということです。

 

 そして、ビジネスにおいてリスクというときに、リスクのふたつの意味の中でより重要なのは、「結果にバラツキがある」という②のほうです。

 どういうことか、続けてみましょう。


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