【0053】法務担当者のためのキャリアデザイン考 5 of 5

10-ビジネス法務77一般スキル, 78一般知識, 79一般教養, 95こぼれ話, 97最終話, 99引用

~あらすじ~
キャリアを「生涯過程を通して、ある人によって演じられる諸役割の組み合わせと連続」と再定義し、その役割に就くための手段・役割を演じるための手段を考えると、「プロフェッショナルとして活躍するプロセスを経ること」となったとき、「プロフェッショナル??法務担当者はスペシャリストではないのか」という新たな疑問が生まれます。
その疑問に対する答えは、法務担当者はスペシャリストではなく、プロフェッショナルを目指さなければならない、というものでした。

法務担当者が身につけるべき最も重要なもののひとつが「勘」であって、その「勘」はプロのプロたる特徴なのである。

業務上なんらかの相談を受けたときに、即座にその善悪と悪さ加減を判断できること。

これは、言葉にできていませんでしたが、日々業務を行う中で、法務担当者として身につけなければならない、最重要の感覚だと、常々感じていました。


勘とは、物事の因果関係を経験の積み重ねによって無意識に見出すことである。その瞬間には意識がないのだが、判断した後に改めて論理的になぜそうしたのかを説明しろと言われれば、明確に説明することができるという類のものだ。
このような勘の働きこそ、プロのプロたる特徴である。

大久保幸夫 『キャリアデザイン入門 Ⅰ・Ⅱ』

そのように最重要だと感じていた”その感覚”が明文化され、「勘」と名付けられている。
そして、その「勘」こそがプロのプロたる特徴とされている。

いろいろがストンと腹に落ちた気がしました。

法務担当者は、この「勘」を養うために、法律の勉強をするわけです。


法を学んだ人ならば、何かの法的な争いに直面したときに、その争いが法によって解決できる問題なのか、もしそうだとして、法を適用すればどういう結論になりそうか、ということがおおよそわかるようにならなければなりません。その争いに関係するのがどの法律のどういう条文かを見つけだし、その条文を読んで何を定めているのかを具体的に理解し、その条文に関する判例を調べ、調べたルール(条文と判例)を争われている事実にあてはめて、いったんの結論を導いてみる。(略)
このように、条文や判例を操作することによって得られたいったんの結論が、法を背後から支える価値観や理念に照らして妥当かどうかを判断する(略)
条文や判例を操作して導かれた結論に拘泥せず、法の理念に照らせば、むしろこう判断するべきだ、と思えること(…)、そのように「こう判断すべきだ」というのは、さまざまな個別の事例を通じて養われた、法感覚、実務家的直観から身に付いてくるものです。

伊藤真 『伊藤真の法学入門』

法務担当者としての法律の勉強に、条文や判例の暗記は必要ありません。

また、実務経験がなければこの勘は身に付かないので、ペーパー資格では役に立ちません。
資格試験に合格するのためだけの勉強(テクニック?)というのも役に立ちません。

暗記や資格試験合格のためだけの勉強は不要ですが、一方で、条文や判例を見つけ出し理解して目の前の事実に当てはめる、ということができるだけの勉強が必要です。

勉強をして「条文や判例を見つけ出し理解して目の前の事実に当てはめる」ということが(ある時点では)できるようになったとして、
条文の解釈や裁判所の判断は時代や世論によっても変わります。

そうなると、法務担当者は、変わり続ける解釈や思考方法を追いかけるため、一生勉強しつづけなければなりません。

さらに、時代や世論に影響されるということは法律だけでなく政治・経済の動きを捉えておく必要がありますし、そのためには歴史・思想・科学の知識も必要になるでしょう。

暗記や資格は要りませんが、とてつもない範囲と量の勉強をし続けることになります。
広範囲・膨大な量とはいえ、その勉強は、法務という専門領域につながるものでなければなりません。

ある程度の水準で一人前、というスペシャリストではなく、成長し続けるプロフェッショナルでなければ法務担当者は務まらないと思います。

プロの特徴である「勘」と一定水準に到達すればおしまいとはならない宿命にあること。
これらの理由から、法務担当者はプロフェッショナルでなければならないと考えます。

おまけ 「将来のキャリア」に対する回答

試験結果という過去の実績によって将来のポジションが決まってしまう。

どちらかというと過去のイメージ。来し方、学歴・職歴・経歴、過去を積み上げをキャリアであると理解していた(日野)がひとつの質問に衝撃を受けたことから、このような長文を書くことになったわけですが、そうして考えた結果、その質問に対する回答はどうなったか。

こんな長文を読んでくださった方にはお伝えしなければ失礼だ、という義務感から開示しておきます。

  • 問:今後のキャリア(将来のキャリア目標)
  • 答:身近な人に喜んでもらうこと
     身近な人にはこのブログの読者も含まれていて、
     役立つモノ・価値を渡すことができる人間になりたい。

ここまで書いてきた長文をすべてぶつければ理解してもらえる可能性も出てきますが、この3行だけではまず理解していただけないブッ飛んだ回答になりまして、結局「偉くなりたいッス」「出世したいッス」「そのためにガンバリまっす」という即物的な内容に書き換えることになりました。

サラリーマンって、大変ですよね。

-完-

(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。


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