【0087】一才桜とともに考える法務担当者の心構え 2 of 6

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–前回までのあらすじ–

それはある年の春分次候。ついこのあいだ生を受けた娘が、誕生から一月を過ぎようとする頃。事務所近くの花屋さんへ。「誕生から一月の記念に残す何か」として一才桜がふさわしいものかどうか、現物を見に。店内は狭く8帖くらい、カウンターの向こう側に在る者を見て見ぬふりをしてカウンターとは反対側ショーウィンドーをひと通り眺めると、あえて見ないようにしていたカウンターの向こう側の者が声をかけてきました、
向側「どうしましたか?」
日野「(なぜかしどろもどろ)ちょっと前にオモテに一才桜?があったように思って、」
(とまだ読点(、)の段階なのにそこにかぶせるように)
向側「ああ、そんなん。もう早いうちにないですよ。」(※1)
向側「すぐになくなってしまうんですよ。今年はもう時期ちがうし(※2)」
向側「来年入るかはわかりません」
そのまま(日野)が店から出ようとドアと押し開けました。(日野)の体半分が外に出かけると、カウンターの向こう側の者はドアノブを引いてドアを閉めてくれました。店の外からそれを見た(日野)としては、店から締め出されたような(※3)感情を持ったのでした。

以上が、春分次候の頃、事務所近くの花屋さんで起こったコトの顛末です。

さて、ここまででは公開悪口だが

まあもともとの動機が「誕生から一月の記念に残す何か」として一才桜がふさわしいものかどうか、「現物を見に」出かけた、ということだったので買うつもりがなかったところ見透かされてこんな対応なのかもしれませんが、とにかく大変不快な想いをしました。

このように不快な想いをしたわけですが、コトの顛末を書いて「不快だったよ」というだけではただの公開悪口です。

そんなものを書くつもりはありません。
 
ここにこの事の顛末を書いたのは、法務担当者として仕事をする上でこの花屋さんが反面教師になると考えたからです。

法務担当者として仕事をしていく上での心構えの話です。

 

教訓1:「バカにされた」と思わせてはならない。

まず(※1)「ああ、そんなん。もう早いうちにないですよ」の言葉。

この言葉を聞いて(日野)が感じたままに書き起こしてみるとこんな感じです。

「ああ、一才桜ですね。

あれは売れ筋でして、あのような人気の高い商品はどのお店でも頑張って仕入れてはすぐに売れてしまうのですが、特に我々のような繁盛店ではすぐになくなります。

そういうことですからもし見かけられたのでしたらラッキーと思って即時に買っていただかないと、まあ次はないですね。

ああ!そうか、そうですね。売れ筋と判らなかったんですね、失礼しました。お花のこと知らなさそうですものね。我々の屋号もご存じないですよね。この際覚えてください、うちの店××××いいますわ」

向こう側の者がどう感じ・どう考えて「ああ、そんなん(…)」と言ったのかわかりません。わからないのですが、(日野)としてはバカにされたように感じました。

  • そんな人気商品を、いまごろですか?
  • 一才桜いうて桜ですよ?もう時期が過ぎてることも知らないですか?
  • うちみたいな繁盛店でこの時季にこんな人気商品が残ってるわけないでしょ?

そういう感じ。

 

(①②は)花屋さんに花の知識で勝てるわけがない。まして(③のような)そのお店の事情についてはそのお店の店員さんには勝てるわけがない。

そのような専門性の高い内容について、それを知っていることそれ自体に優位性があるような態度で来られると、受け手としては拒否反応を起こしてしまいます。

少なくとも(日野)は(※1)の直後に1秒ほど絶句したあと正気を取り戻してすぐに体を出口に向けています。

 

ここで法務担当者の立場を考えてみると。

法務担当者は、スタッフ部門なので、直接は事業に関わることはできません。スタッフ部門である法務担当者が間接的に働きかけることにより実際に行動するのは(プロフィット部門という意味での)ライン部門です。

実際にお客様と接する営業をする部署や商品をつくる研究開発・製造の部署に所属するひとたち、(少なくとも自分以外の者・自部署以外の者という意味での)他人に動いてもらわないと、法務担当者は成果を挙げることができません。

そのような“他人”に動いてもらわなければならない法務担当者が上から目線で「こんなことも知らないんですか?」という態度ではダメです。誰も言うこと聞いてくれません。

論理的にはどんなに立派な提言であっても、“他人”に採用されなければ・誰ひとり動かすこともできないなら、その提言はゴミです。

–次回につづく–


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