【0094】「法務担当者はスタッフであるから」というときのスタッフ(前) 3 of 5

10-ビジネス法務63意思決定, 78一般知識, 99引用

–前回までのあらすじ–

(日野)は「スタッフとしてはこうあるべき」と、スタッフという言葉に強い想いを持って使い、その強い想いが前提となる論の進め方をすることが多くあり、「スタッフ」の意味・イメージが一致しないと、論がつながらないので、このブログにおけるスタッフの意味を定義するのだけど、このブログで「フタッフとして~」とか「~はスタッフだから~」というときの「スタッフ」は、経営学の領域に、経営学の中でも組織論の分野にあります。
そこで経営学の中のスタッフをひもといていくわけですが、なにから始めるかというと、社会科学・人文科学ならまずは「有斐閣アルマ」シリーズで、さくっと300頁くらいで体系も掴めます。そうして引用してみましたが、スタッフとは何かが明確ではありません。他もみてみましょう。

同じ有斐閣でも別シリーズがある

次に引くのは、アルマと同じく有斐閣から有斐閣双書シリーズです。

双書はアルマより歴史あるシリーズで、双書に親しんでいた先輩方からすると「アルマでは頼りない」と感じるかもしれません。

(日野)と同世代の者からすると「年寄りがうるせえ。双書はオカタイのよ」となるかもしれませんが、アルマに慣れた(日野)が「ストゥディアは薄いよね」と感じるのと同じことかもしれません。

ちなみに(日野)はストゥディアシリーズも重宝してます。

 

このようにアルマより歴史ある双書シリーズのひとつということで、ここで挙げる有斐閣双書『経営学』はもう絶版のようです。

そういう本なので、出版年を見ると古いように感じますが、内容をみれば古くない、いま見てもすばらしいものです。

命令権をもつものをライン権限とし、助言・勧告によるものをスタッフ権限と呼ぶ。このスタッフ権限で主として仕事をする人ないし部門を組織内に有するか否かで、組織構造は変わってくる。(…)ラインとスタッフの区別は本来権限の相違と理解すべきであるが、通常、便宜的に、主としてスタッフ権限によって活動している人または部門をスタッフないしスタッフ部門と呼んでいる。この場合、スタッフ部門は、専門またはその他の能力に基づいて、組織内の他部門を助言・勧告することによって補佐し援助しているのである。

中村常次郎 他 『経営学 第3版』

端的に「スタッフとは」というものではないのですが、権限の相違がラインとスタッフの区分であることは明確に示されています。

次にこう続きます、

以上のように、ラインとスタッフの区別は権限の相違であるが、企業にとっては、スタッフ権限によって補佐ないし援助される職務(job)内容が問題となる。もともと、スタッフ権限を使うようになったのは、人事とか会計とかの専門的知識・能力を企業に生かすためである。したがって、この補佐・援助される職務ないし職能の内容によってスタッフをさらに分類することが行われてきた。(…)専門スタッフは、本来スタッフが必要になる原因となった人事、会計、技術等々の専門的職務を組織のなかで遂行させるために生まれたもの(…)サービス・スタッフは…企業の他部門に対し…補助的なサービス提供の形で業務遂行をしている部門を指す。購買業務、福利厚生のサービス、輸送の管理業務等々である。(…)ゼネラル・スタッフは、経営の全体的問題について、経営者および全般管理者を補佐・援助する機能をもつスタッフである。具体的には調査部、企画部、社長室といった部門がこれに相当する。

中村常次郎 他 『経営学 第3版』 下線は(日野)による>

ここでは、スタッフをさらに3つ(専門スタッフ・サービススタッフ・ゼネラルスタッフ)に区分しています。そうして区分した上で、次の引用ではその3つの中でゼネラルスタッフが重視されている、と続きます。

このゼネラル・スタッフが重視されるようになったのは、基本的には、企業規模の拡大と、経済社会における技術進歩などの環境条件の変化の急速なこととによって、経営者が自ら資料・情報を集め整理し、将来を予測して、意思決定を(…)1人だけで実施していくことが、甚だ困難となり、結局、最後の決断を除き、職務の遂行を補佐するスタッフを必然的に要請するようになったためである。

中村常次郎 他 『経営学 第3版』

この中村『経営学』では、「ラインとスタッフの区別は権限の相違である」ということから話が始まり、3つの区分(専門スタッフ、サービススタッフ、ゼネラルスタッフ)も権限の相違から区分されるものであるということで、論理がぶれません。

論理の一貫性にアカデミズムの香りを感じます、そのような内容になっています。

–次回につづく–


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