【0088】一才桜とともに考える法務担当者の心構え 3 of 6

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–前回までのあらすじ–

ある年の春分次候、娘が誕生から一月を過ぎようとする頃、「誕生から一月の記念に残す何か」として一才桜がふさわしいものかどうか、「現物を見に」事務所近くの花屋さんへ。
あえて見ないようにしていたカウンターの向こう側の者が声をかけてきました。
向側「どうしましたか?」
日野「ちょっと前にオモテに一才桜?があったように思って、」
(とまだ読点(、)の段階なのにそこにかぶせるように)
向側「ああ、そんなん。もう早いうちにないですよ。」(※1)
向側「すぐになくなってしまうんですよ。今年はもう時期ちがうし(※2)」
向側「来年入るかはわかりません」
そのまま(日野)が店から出ようとドアと押し開け(日野)の体半分が外に出かけると、向こう側の者はドアノブを引いてドアを閉めてくれました。店の外からそれを見た(日野)としては、店から締め出されたような(※3)感情を持ったのでした。

これは公開悪口ではなく、ここから法務担当者としての心構えを考えさせられたという話。
まず(※1)なんて、「バカにされた」と思ってしまうから、そんなふうに思わせる発言はダメ。だって法務担当者はスタッフ部門だから、ライン部門に動いてもらわなくちゃ、論理的にどれほど立派な提言でも採用されなければゴミ。

もうひとつ、※3(=向側の者がどう思ってドアを閉めたのかはわかりませんが、店の外からそれを見た(日野)としては、店から締め出されたような感情を持った)も同様のことが言えます。

この花屋さんは見送りのつもりでドアを閉めに出てきてくれたのかもしれませんが、その行為を受けた(日野)は、お店から追い出され・締め出されたように感じました。

もしそれが型どおりの美しい振舞いであったとしてそれを美しいと感じるかは相手の受け止め方次第です。

 

繰り返しになりますが、法務担当者はスタッフ部門として(先程と同様にプロフィット部門という意味での)ライン部門に実行してもらわなければなりません。

同じ社内であっても、(少なくとも自分以外の者・自部署以外の者という意味では)他人です。

そのような“他人”に動いてもらうためには・実行してもらうためには、自分の真意をしっかりと理解してもらう必要があります。

 

自分の真意を理解してもらうために大切なのは、その意見を述べるときに「美しい日本語かどうか」とか「正しい敬語かどうか」ということではないように思います。

それよりも、「どのようにして表現すれば真意が伝わるのか」「どう伝われば納得され実行してもらえるのか」を考えているか否かが大切ではないかと思っています。

 

精神論のようですが、相手を尊重する気持ちがあるかどうかで、伝わり方が変わるように思います。

 

そのような相手を尊重する気持ちを持つためには、「自分とちがう分野では相手のほうが優れている点がある」と推定してみる。これによって相手を尊重する気持ちが生まれるのではないでしょうか。

 

今回の花屋さんの例でいうと、

この花屋さんはこの時期に「一才桜」を求めに来た(日野)を、無知な人間と捉え、自己の優位性を感じたのではないでしょうか。

しかし(日野)は花に関する知識で花屋さんに勝てませんが、一方で、法律に関しては(日野)の方がこの花屋さんより多く知識を持っていると思います。

 

相手がある分野で無知であったとして、何に対しても無知ということはまずありません。

あるひとつの分野で優位性を持ったとして、すべてにおける優劣が決まったわけではありません。

 

相手をどのように想っているか、その想いは知らず知らずのうちに言動に現れると思います。

相手をバカにしてその相手と接していると、正しい敬語だとか美しい日本語のような言葉遣いの善し悪しと関係なく、その相手は「バカにされた」と感じることになるでしょう。

そして、「バカにされた」と感じた相手はそのバカにした人間の言うことを拒否します。

拒否されれば、自分の主張は採用されません。

 

これも繰り返しになりますが、)ビジネスにおいて他者に採用されない考えというのは、理論上ではどれほど完璧であったとしても、ゴミです。

–次回につづく–


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