【0270】役員変更登記は2週間以内(予選の予選はできない おまけ2)

10-ビジネス法務

この投稿、本来6月18日にアップする予定でしたが、最繫忙期のため後倒しで、先週に引き続きの投稿となります。

 

ここまでで、代表取締役選任の正しい段取りは下の通りです。

前提は、内部昇格ではなく、社外人材が抜擢されるパターンです。
3月決算の取締役会設置会社で、株主総会が6月29日(火)(いわゆる集中日)と仮定しています。

議題決定の取締役会から、役員就任の登記申請までの実施項目と実施する日付を挙げていくと、下の【表2】となりました。

【表2】

項目

日付

取締役会構成員

① 議題決定の取締役会

6月20日(月)

代表A、B、C

② 株主総会招集通知の発出

6月21日(火)

代表A、B、C

③ D氏を7月1日付で取締役に選任する株主総会

6月29日(水)

④ 取締役Dの就任

7月1日(金)

B、C、D

⑤ D氏を代表取締役に選任する取締役会

7月1日(金)

B、C、D

⑥ 代表取締役Dの就任

7月1日(金)

代表D、B、C

⑦ 代表取締役D就任の登記申請

7月15日(金)

 

今回、おまけは
この【表2】が正しいとき、⑦の日付が法定の範囲内かどうか、という話です。

会社法915条で、役員の「変更が生じたときは、2週間以内に」変更の登記をするよう定められています。

このとき「2週間間以内」の計算方法は、民法に従うようです。

民法の期間計算というと、初日不算入とか、応当日が無いときは末日(4月31日が応当日であれば4月30日)とか、応当日が休日の場合は翌日とか、各種試験用テキストで最初のほうにでてくるややこしいやつです。

いろんな方がいろいろ書かれています。いまならWebページの検索をするといくらでもでてきます。ただどれを見てもいまいち、知りたいことが知りたい形ででてこないものです。

「週」で定めた場合の、(日野)にとっていちばん理解しやすかったのは、我妻ダットサンでした。圧倒的にわかりやすいです。

(2)暦的計算方法(…)
(ア)起算点 そこで第一に起算点が問題となるが、日の端数は加えない。すなわち1月1日中にいまから10日間といったときは1日は端数になるから計算に入れない。初日は計算しないという原則が生ずるわけである。(…)
(イ)満了点 つぎに満了点を決めるには、月・年はその間の月の大小、年の平閏をかまわず暦に従って定められた期間を計算し、期間の最後の週・月または年の起算日に応答する日の前日の終了をもって期間の満了点とする

我妻榮 他『民法1 総則・物権法 第3版』p222-223 下線は(日野)による>

引用では省略しましたが、それぞれ根拠(民法140条)(民法143条)(最判昭57・10・19民集~)もしっかりと明記されています。

そして、ある日を基準として未来の応当日を計算するだけでなく、
ある日から遡って応当日を計算する場合まで明記されています。これが他にはない。

なお、民法は起算日から将来に向かって計算する場合の計算方法について規定しているが、これは起算日から前に遡って計算する場合にも準用すべきであろう。たとえば一般社団法人の社員総会の通知は1週間前に発しなければならないから、4月1日に開こうと思えば3月31日を起算日として逆に1週間を数え25日が末日であり、その末日の始める前、すなわち、24日中に発することが必要である。

我妻榮 他『民法1 総則・物権法 第3版』p223 下線は(日野)による>

この我妻ダットサンの記述にしたがって、カレンダーで数えてみます。
3月25日から4月1日までを2022年のカレンダーで示すと下になります。

 

 

 

 

3/24

3/25

3/26

3/27

3/28

3/29

3/30

3/31

4/1

 

 

4/1の前日3/31を起算日①として、1週間⑦まで数えると3/25が末日です。

 

 

 

 

3/24

3/25⑦

3/26⑥

3/27⑤

3/28④

3/29③

3/30②

3/31①

4/1

 

こうして見ると次の2点が理解できます。

ア)1週間前というのは中7日必要であるということ
イ)1週間後というのは起算点の曜日の翌週の同じ曜日であるということ

 

では、今回挙げてきた例に戻ってみます。

【表2】

項目

日付

取締役会構成員

③ D氏を7月1日付で取締役に選任する株主総会

6月29日(水)

④ 取締役Dの就任

7月1日(金)

B、C、D

⑤ D氏を代表取締役に選任する取締役会

7月1日(金)

B、C、D

⑥ 代表取締役Dの就任

7月1日(金)

代表D、B、C

⑦ 代表取締役D就任の登記申請

7月15日(金)

④⑥でD氏が7月1日に代表取締役に就任したので、2週間以内にその登記申請をしなければなりません。

さきほどの気づきは、
ア)1週間前というのは中7日必要であるということ
イ)1週間後というのは起算点の曜日の翌週の同じ曜日であるということ
の2点でした。

気づきは1週間なので、登記申請の期日である2週間に置換えると、
ア)2週間前というのは中14日必要であるということ
イ)2週間後というのは起算点の曜日の翌々週の同じ曜日であるということ
になります。

7月1日に就任したので、その翌日7/2を起算点①として、⑭まで数えると

 

 

 

 

 

7/1

7/2①

7/3

7/4

7/5

7/6

7/7

7/8

7/9

7/10

7/11

7/12

7/13

7/14

7/15⑭

7/16

7月16日が応当日となります。

7月16日は土曜日で、法務局の窓口が空いていないので、
2週間以内を守るために7月15日に申請書を提出することになります。

 

さて、今回の例、改めて見てみましょう。

【表2】

項目

日付

取締役会構成員

③ D氏を7月1日付で取締役に選任する株主総会

6月29日(水)

④ 取締役Dの就任

7月1日(金)

B、C、D

⑤ D氏を代表取締役に選任する取締役会

7月1日(金)

B、C、D

⑥ 代表取締役Dの就任

7月1日(金)

代表D、B、C

⑦ 代表取締役D就任の登記申請

7月15日(金)

D氏は7月1日に代表取締役に就任していますが、
③では6月29日時点で7月1日付で取締役に選任され、⑥は7月1日に取締役に就任してから代表取締役に選任されています。

③⑥のちがいは、③は6月29日の時点で7月1日の取締役就任を決定しているところです。
6月の時点で7月の決議をしているので、7月1日午前零時からDは取締役となり、
取締役の変更に関しては初日不算入となりそうです。
そうすると、取締役の変更登記の起算点は7月1日となりそうです。

7/1を起算点①として、⑭まで数えると、

 

 

 

 

 

7/1①

7/2

7/3

7/4

7/5

7/6

7/7

7/8

7/9

7/10

7/11

7/12

7/13

7/14⑭

7/15

7/16

7月15日が応当日となります。

う~ん、
正直自信は無いです。

今年に限っては、どちらにしても7月15日に登記申請していたはずなので間に合ってますが、
登記申請は余裕を持って提出しましょう、としか言えないです。

提出さえしてしまえば、あとは最悪補正でなんとか・・・

このようにややこしい期間計算、
役員の書名押捺をいただくスケジュールを組むときに1日のちがいはとても大きいので、
勝負はせずに、
自社に適合した経験をお持ちの司法書士に見ていただくのがベストです。

 

–完–

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