【0091】一才桜とともに考える法務担当者の心構え 6 of 6

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–前回までのあらすじ–

春分次候、「誕生から一月の記念に残す何か」として一才桜を見に事務所近くの花屋さんいわく、
向側「ああ、そんなん。もう早いうちにないですよ。」(※1)
向側「すぐになくなってしまうんですよ。今年はもう時期ちがうし(※2)」
向側「来年入るかはわかりません」
(日野)がドアと押し開け体半分が外に出かけると、向こう側の者はドアを閉めてくれ、(日野)としては店から締め出されたような(※3)感情を持った、
という事の顛末から法務担当者としての心構えを考える。
まず(※1)法務担当者としては、相手が「バカにされた」と思って提言を採用しなければアウト。(※3)は型どおりであったとしてそれをどう感じるかは相手の受け止め方次第。さらに(※2)自分の知識や経験によるバイアスを振り払ってフラットな気持ちでまず最後まで聞くということが大切。その上で花屋さんが売っているのは花だけか、という話。
少なくとも(日野)があの日求めていたのは、花を手に入れるということだけではなく、スタバでいうと売っているのはコーヒーではなく、そこで過ごすゆとりのある時間やそういう空間

では、花屋が売っているのは花か?とおなじ論理で考えたとき、法務担当が提供しているのは何か。法律知識ではないと考えています。

相談者は、例えば

  • なんとなく不安、モヤモヤの根本は何か
  • どうやら禁止されている事をしてしまったようだけど、どのくらい悪いことかわからないし、解決方法もわからない。どうしたらいいのか
  • 新しい事業を起こすのだけど届出とかたくさんあるみたい。どういうことに注意しなければならないのか

というような気持ちを持って法務担当者に相談に来るのだと思います。

そこで法務担当者が提供するのは、法律知識そのものではなく、相談を受けるうちに解きほぐされ不安が解消されていく感覚、最終的には不安のない安らかな生活を提供しているといえるのではないでしょうか。

 

専門家として、専門分野の知識はあって当然、加えてそれを素人やにわかにわかりやすく伝える能力が求められていることを、しっかり認識して行動しなければなりません。

 

まとめ:「時期ちが」ったはずの一才桜は自宅近くの花屋さんで手に入れて、立派な花を咲かせるのでした。

今回不快に感じたこの花屋さん、実は数年前にも不快な想いをしていました。

そのときは結婚記念日に嫁さんにお花を、と思って行きました。嫁さんにどんな花を贈ったらそんな顔をするかと、ウキウキして花を眺めに行ったのですが、とにかく事務的で温かみのない応対。

 

(日野)の勤め先でも取引先が新社長就任となると胡蝶蘭を注文するのがそのお店です。近所で便利だし、チェーン店だから全国的に配達をおねがいできるので大阪みたいな地方で商売していると重宝します。

そのように会社として取引しているときに不快な想いをしたことがなかったので個人でも行ってみたらとにかく事務的な温かみのない対応で、これで本当に生き物である花を育てることができるのか疑うレベルのマニュアル感です。

胡蝶蘭をドカーンドカーンというような商売をしていると個人のブーケみたいな単金の低いものに関心が無くなるのでしょうか。

それならそれで、役員就任お祝い専門、とか掲げておいて欲しいものです。

見分けがつかないので。

 

この素人には見分けがつかないというのも、教訓のひとつです。

専門家が強みとして主張する専門性などというものは素人から見ると区別がつかないものです。

会計士、税理士、司法書士、行政書士などなど、一般の方からは誰が何をしてくれる人か区別つかないはずです。実際(日野)は(自分がそのような“いわゆる士業”を職業にしようとするまでは)区別がつきませんでした。

自分自身が“いわゆる士業”を職業にしようと決意したあとも、独占業務ということを理解するのに相当時間がかかりました。会社で経理をするには会計士・税理士の資格が必要で、法務をするには弁護士・司法書士の資格が必要なのだと思っていました。なのでそのようなそんな資格もなくある会社の従業員(税務担当)として申告書の作成をして税務署に提出に出かけたあとには拍子抜けしました。(当時はせいぜい日商簿記2級検定に合格していたくらいで)「ああ、税申告するのに免許なくてもできるんだ」と。

“いわゆる士業”は確かに専門性の高い職業ではありますが、不思議な制度だなあと思います。

–完–


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