【0100】「法務担当者はスタッフであるから」というときのスタッフ(後) 3 of 3

10-ビジネス法務63意思決定, 77一般スキル, 78一般知識

–前回までのあらすじ–

テキストは、学部生向けと資格試験向けではまったく性格が異なり補い合う性質の物で、視点を変えてテキストではなく辞書を見てみると、専門的な「××辞典」は素人には使いこなせない。実際に言葉を調べるとっかかりとしては、国語辞典がよく、まず『旺国』つづいて同型小型辞典の『岩国』『三国』、さらに中型辞典である『広辞苑』『大辞林』それぞれ似通った意味を書いていますが、「××学辞典」や学部生向けのテキストと比べると、国語辞典はより端的な表現が成され、

単純に文字数が少ない、その制約があるからこそ本来多義的な言葉から削ぎ落され・研ぎ澄まされる、

「スタッフ」でいうと以下が、各国語辞典が削ぎ落し・研ぎ澄ました結果残った特徴的な表現といえるのではないでしょうか。

「参謀的」「経営の中枢」「出演者以外=脇役・裏方」「製作・販売に直接携わらず」「間接部門」「助言・支援する機能」

芋づる式に掘り出される言葉に芋をみつける

こうして特徴的な表現を見つけると、今度はそれら見つけた言葉の意味を調べたくなります。

 

今回の「スタッフ」を例にして、「参謀」「助言」「支援」を調べてみると、

  • さんぼう【参謀】②相談相手となって知恵をはたらかせ、策略を練る人。献策する人
  • じょげん【助言】かたわらから言葉を添えて助けること。また、その言葉。
  • しえん【支援】力を貸して助けること。「活動を-する」

ここからさらに下線部分が気になり調べてみます、

  • けんさく【献策】計画や計略などを、上の者に申し述べること。また、その策。
  • かたわら【傍ら】力を貸して助けること。援助。

というように芋づる式に言葉を調べたくなります。(以上<松村明 他 『旺文社国語辞典 第十版』>より

このような欲求、ひとつの言葉を調べるとそこに書かれている別の言葉を調べたいという欲望が生まれるのは国語辞典の特徴だと思います。

 

その欲求に応えて実際に調べてみると、特徴的な表現に対応する言葉の意味が見つかり、

その対応する言葉に相対する概念として元々調べようとしていた言葉を捉えられることがあります。

今回の「スタッフ」を例にすると、(日野)が、各国語辞典が削ぎ落し・研ぎ澄ました結果残った特徴的な表現と感じる「参謀的」「助言・支援する機能」を調べてみると、「相談相手となって」「献策する人」「かたわらから」「上の者に」などの表現が集まってきた結果、スタッフの機能は「第三者の存在が前提となっている」ことが理解できてきます。

 

このように、知ろうとする言葉だけを直接見ているより、その知ろうとする言葉の対義語や対応する概念を並べてみると、その知ろうとしている言葉自体の周辺に浮かび上がる影が見えてくるように思います。

影を見ることでその本体が理解できるというイメージです。

 

 

こうして国語辞典から芋づる式に言葉を調べた結果、対義語や関連する言葉を影として本体であるその言葉の本質を掴むことができます。そうしてその言葉の本質(のようなものをおぼろげにでも)つかんでからテキスト(学部生向け and/or 資格試験向け)に戻ってみると、同じ文章を読んでも理解が深まり、新しい発見があるはずです。

例えば有斐閣アルマの引用部分はスタッフを理解していないと「スタッフ」のことを書いていると判らない、とか。例えばドラッカー「スタッフはいらない」はスタッフが本来どうあるべきもので現実にどうなっているかを知らないと煽り表現だと判らない、とか。

まとめます

社会科学・人文科学の分野で調べモノをするときの手順

今回は、このブログにおいて、「スタッフとしての法務担当者」とか「法務担当者はスタッフであるから~」と言うときのスタッフの意味を定義しようとしてきました。

「ホウタンノソ」とするために抽象化します。

 

手順としてまずは、(社会科学・人文科学の分野で)ある単語を調べようとするときにの手順をまとめおきます。

まずとっかかりは資格試験向けのテキストが有益です。

理由は、試験対策である以上常識的・一般的な意味が答案に書ける程度に端的にかかれているからです。

そういうもので中心的な意味を固めてしまいましょう。

 

その次に有斐閣アルマです。

有斐閣アルマのような入門的かつ出門的なテキストを経て、さらに基本書・体系書・基本文献を見てみることで、資格試験テキストで固めた中心的な意味に加えてその周辺にある他の意味・論点を拾って理解していきます。

そうして言葉が持っている論点を理解してしまえば、専門的な「××学辞典」が役に立ちます。

 

基本書・体系書・基本文献まで進むことのない領域であったとき・有斐閣アルマのような入門的かつ出門的なテキストに留まったときは、「××学辞典」のような専門的なものより、より一般的な国語辞典を見てみましょう。

そこで対義語・対応する言葉・対立概念を見出していくほうが、その言葉の本質をイメージで捉えやすいように思います。

いきなり専門的な言葉で理解するより、一般的な言葉の意味と、その反対の言葉から生まれるイメージを持つことの方がその言葉の本質に辿り着くことが多いように思います。

(日野)は、このような手順で言葉の意味を定義していくわけです。

 

–次回につづく–


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