【0101】「法務担当者はスタッフであるから」というときのスタッフ(全)
–前回までのあらすじ–
今回は、このブログにおいて、「スタッフとしての法務担当者」とか「法務担当者はスタッフであるから~」と言うときのスタッフの意味を定義しようとしてきました。
【0092】からは前編として学部生向け&資格試験向けのテキストから、
【0098】からの後編では専門家向け&一般的な国語辞典の順に辞書を引いてきました。
ある言葉を調べようとするときの手順をまとめたのが前回【0100】で、まずとっかかりは常識的・一般的な意味が答案に書ける程度に端的に書かれている資格試験向けのテキストが有益でこれで中心的な意味を固めます。
その次に有斐閣アルマのような入門的かつ出門的なテキストを経て、さらに基本書・体系書・基本文献で中心的な意味に加えてその周辺にある他の意味・論点を理解するところまでいくとその後は専門的な「××学辞典」が役に立ちます。
一方で、基本書・体系書・基本文献まで進むことのない領域であったときは「××学辞典」のような専門的なものより、より一般的な国語辞典で対義語・対応する言葉・対立概念を見出し、その反対の言葉から生まれるイメージを持つことの方がその言葉の本質に辿り着くことが多いように思います。
(日野)は、このような手順で言葉の意味を定義していくわけです。
そのようにして導かれた、このブログにおけるスタッフの定義
では最後に本題に戻って、このブログにおいて、「スタッフとしての法務担当者」とか「法務担当者はスタッフであるから~」と言うときのスタッフの意味を定義します。
今回は、TAC診断士講座スピードテキストを書換えた次の文章を基本として、まず次にように定義します。
“
スタッフは、ラインの活動を支援していく職能であり、いわば間接的職能である。スタッフは、専門領域に関する助言、補佐を行うことがその職能であり、ラインへの直接的な命令の権限を持たないことが特徴である。
“
一応端的にビシッとしています。
まずはここまでで充分です。
ここに尚書としてこう続きます。
“
なお、ラインとは、購買、製造、販売といった企業の目的達成を直接行う経営活動の基本的職能であり、それを欠いた場合に、経営活動そのものが成り立たなくなってしまうような職能である。ラインとスタッフは、組織構造を決めるうえでの基本概念であり、その違いは職能の内容と権限関係から生まれている。
“
ここで終えたいところですが、これでは不足で・偏りがあるので、これに加えて肉付けとして、学部生向けのテキストや国語辞典から抽出される対義語や対応する概念を並べておきます。
(学部生向けのテキストから)
- 命令権をもつものをライン権限とし、助言・勧告によるものをスタッフ権限と呼ぶ。
- スタッフはさらに3区分にわけられる
①専門スタッフ:本来スタッフが必要になる原因となった人事、会計、技術等々の専門的職務を組織のなかで遂行させるために生まれたもの
②サービス・スタッフ:企業の他部門に対し補助的なサービス提供の形で業務遂行をしている部門。購買業務、福利厚生のサービス、輸送の管理業務等
③ゼネラル・スタッフ:経営の全体的問題について、経営者および全般管理者を補佐・援助する機能をもつスタッフ。調査部、企画部、社長室等 - それ自体が利益を生む活動ではないが、利益を生むことに直接かかわる活動(=ライン職能)を補佐し後方支援する活動
- ドラッカーが『現代の経営』でいう「責任抜きに権限をもつ」という意味でのスタッフにはなってはならない。
(国語辞典から)
各国語辞典が削ぎ落し・研ぎ澄ました結果残った特徴的な表現とそこから関連する・連想する言葉
特徴的な表現 | (左の語から(日野)が持つイメージ) |
関連・連想する言葉 | 左の語の意味<松村明 他『旺文社国語辞典 第十版』より> |
参謀的 | |
さんぼう【参謀】 | ②相談相手となって知恵をはたらかせ、策略を練る人。献策する人。 |
けんさく【献策】 | 計画や計略などを、上の者に申し述べること。 |
助言、支援する機能 | |
じょげん【助言】 | かたわらから言葉を添えて助けること。 |
かたわら【傍ら】 | ①そば。わき。「-に辞書をおく」 |
しえん【支援】 | 力を貸して助けること。援助。「活動を-する」 |
出演者以外 | (キャストの対義。主役じゃないという意味。脇役・裏方) |
間接部門 | |
かんせつ【間接】 | ①間に人や物をへだてて対すること。「-照明」 ②遠回しであること。《←→直接》 |
ちょくせつ【直接】 | 間に他のものがなく、じかに接するさま。じかにかかわること。「本人から-聞く」 |
製作、販売に直接携わらず | (間接部門の枕詞。収益を上げる活動(=プロフィットセンター)の対義としてのコストセンターとしてのスタッフ) |
たずさわる【携わる】 | 従事する。かかわりあう。「研究に-」 |
これらの言葉(特に下線部分)からスタッフの機能は「第三者の存在が前提となっている」ことが理解できます。
(…)
言葉を定義するのはむつかしい
まあ、こんなもんです。
ここまでつらつらと、これは端的だ・これは端的でない、などと散々書いてきたのですが、その割にスタッフひとつ定義しようとしてこの冗長さです。
端的に書くのは本当にむずかしいことだと思います。
今回に限らず言葉を定義するテーマは、毎度毎度苦労します。
書き始める前は、元々持っている知識で、「こう定義しよう」と考えています。
「こう定義しよう」という答えありきで書き始めるのですが、調べるうちに新しい発見が続きます。
新しい発見が元々の知識を大胆に書き換えてしまうものですから、その結果の定義は、書き始める前の「こう定義しよう」の枠にはまりません。
否、元々の知識が書き換えられてしまう結果、定義すらできなくなること多々です。
こういう意味だと理解していたけど実はこんな意味もある、
書き出してひとつ知識が増えてボツ。
また書き出してさらに知識が増えてはボツ。と、たくさんのボツが生まれています。
これこそ、いまの(日野)で整理し切れなくても、今回その時一度調べてみた上で時間を経ることで、しっかりとした回答をするための伏線なのかもしれません。
否々、今回は、最後のまとめは冗長でフラフラになってしまったのだけどぎりぎり、ボツにならなかったからこれだけでも意味のあるもののはず、とかとか、
これ以上書いてこれ以上迷宮に踏み込むとあれなのでこのへんで、
–完–