【0206】結果の報告を期待しないこと
大きめの相談が立て続けにありました。
一生懸命に調べ考えて助言をするわけですが、
その後の結果というは共有があったりなかったりします。
事後共有がない案件などは、たまにふと思い出して、
どうなったのか気になります。
自分の助言が適切だったかどうか確かめたい気持ちが起こったりします。
できれば報告が欲しいなあ、
そう思いつつ、自身を振り返ってみると、
弁護士をはじめとした士業のみなさんに相談に行ったあとに、結果の報告をしているかというと、していません。
そんなことを思いながら、調べものをしていると、次の文章に出会いました。
“
病院の患者は「ペイシェント(patient)」といいます。それでは精神科の患者は何というのでしょうか。「クライアント(client)」といいます。そうです、われわれ弁理士の依頼人は「クライアント」なのです。ですから、商標調査や登録異議申立など、依頼人から依頼された仕事を責任をもって処理することは当然なのですが、そのような仕事を通じて依頼人の心を安らかにさせてあげるのが弁理士の仕事なのです。(…)依頼人の会社が正しい方向に導かれるとともに、担当者の気持ちをとても楽にしてあげることができます。まさに弁理士は精神科医と同じような仕事をすることによって社会の役に立つことができるのです。
<小谷武 『商標教室 基礎編』p151 下線は(日野)による>
“
ここでは医師、特に精神科医と比較しながら弁理士の仕事の本質を語ろうとされています。
痛かったり苦しかったりで病院に行って先生に診てもらい、
一生懸命その症状を伝えるわけです。
喉元過ぎれば熱さを忘れるといいますが、
どんな苦しみも消えてしまうと忘れてしまうものです。
診てもらった先生に対して痛みが消えたことを伝えたり、お礼に伺うこともなく、
なんとなれば先生に診てもらったことさえ忘れているかもしれません。
医師に対してはそうです。
“依頼人の心を安らかにさせてあげる”
“担当者の気持ちをとても楽にしてあげる”
弁理士の仕事が、医師と比較して同じなのだと言われると、それはそうだと思います。
それであれば、士業の先生方にお礼や事後報告をしないということも、医師に対してお礼や事後報告をしないのと同じ感覚かもしれません。
では、法務担当者はどうなのか。
(日野)は過去に、次のように書いていました。
“
法務担当が提供しているのは何か。法律知識ではないと考えています。
相談者は、例えば
- なんとなく不安、モヤモヤの根本は何か
- どうやら禁止されている事をしてしまったようだけど、どのくらい悪いことかわからないし、解決方法もわからない。どうしたらいいのか
- 新しい事業を起こすのだけど届出とかたくさんあるみたい。どういうことに注意しなければならないのか
というような気持ちを持って法務担当者に相談に来るのだと思います。
そこで法務担当者が提供するのは、法律知識そのものではなく、相談を受けるうちに解きほぐされ不安が解消されていく感覚、最終的には不安のない安らかな生活を提供しているといえるのではないでしょうか。
<【0091】一才桜とともに考える法務担当者の心構え 6 of 6>
“
法務担当者が提供するのは、法律知識そのものではなく、不安のない安らかな生活であると、
いっています。
今もそう思っています。
これは小谷『商標教室』から引用した箇所にある、
“依頼人の心を安らかにさせてあげる”
“担当者の気持ちをとても楽にしてあげる”
と同じことだと思います。
士業と同じように、
不安のない安らかな生活を提供することが、法務担当の仕事なのであれば、
事後の報告がなくても、よしとしなければならないと
感じた次第であります。