【0097】「法務担当者はスタッフであるから」というときのスタッフ(前) オマケとマトメ
「法務担当者はスタッフであるから~」というときのスタッフを定義するというテーマの前半と後半があって、前回までで前半が終わりました。
今週は、前半部分をまとめておきます。
そのまえにこぼれ話をひとつ
【オマケ】診断士試験とホウタンと
資格試験向けのテキストとして、診断士試験が挙がったのでついでに触れておきます。
診断士試験は法務担当者の役に立ちます。
診断士は経営コンサルタントで唯一の国家資格で、その1次試験の科目は8科目あります。
その8科目のなかで法務担当者にもっとも身近な科目は経営法務だと思います。
診断士試験が法務担当者の役に立つというのは、その経営法務の科目を学ぶことによるのか、というとそうではありません。
診断士試験の経営法務で学び・問われる範囲はビジ法2・3級と同程度で、法務担当者としては知っていて当然の内容です。(知っていて当然の範囲を知る意味では「経営法務」だけでも役に立ちます)
それでは経営法務の他の科目が役に立つということをいいたいのですが、まず科目名を挙げてみると、
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
という科目があります。
これら試験科目を見てみると、まず幅が広いです。
次に、これら一次試験科目のひとつ経営法務の内容はビジ法2・3級と同程度の内容です。ちなみに、財務・会計は日商簿記2級程度の内容です。
つまり、そこそこ・それなりの内容を幅広く要求される試験ということです。(あくまでも1次試験の話です。)
そしてそれがこの試験が法務担当者の役に立つ理由です。
ひとつ、財務・会計や企業経営理論は、会計や経理戦略の知識を持つことでマネジメント層の問題意識・問題解決への思考経路を理解しやすくなります。
もうひとつ、経済学から運営管理まで、言い換えるとマクロ視点から現場の理論まで幅広く知ることで、ライン部門が何に悩んで相談に来ているか把握しやすくなります。
このように、診断士試験のテキストを全範囲について理解しておくと、マネジメント層とライン部門の思考の枠を知ることができるので、スタッフ部門に所属する法務担当者としては仕事が進めやすくなります。
さらに効用があって、理解できないまでも少なくとも全範囲を一読してどういう項目があるか知っておくと便利です。
それは、共通の言葉が増えるということです。
例えば、マネジメント層やライン部門の担当者がふっと放った言葉(具体例でいうと「SWOT分析してみて」とか、「配賦基準を列挙してみて」とか、「類似ドメインがあって」などなど)を聞いたときに、その言葉がどういう意味か知っているか知らないかは大きな違いがあります。
少なくともその単語を聞いたことがある・目にしたことがあるだけで大違いです。
具体例で挙げた中では「スウォットブンセキシテミテ」なんて言葉を知らないと聞き取ることもできません。
聞き取ることができなければメモすることもできず、メモができなければ後々調べることもできません。
その場で意味を思い出せなくても聞き取れていていれば調べることができます。
共通の言葉を持つということはとても大切なことです。
診断士試験の内容を、入門的なテキストで全範囲を(理解はできなくても)一読しておくだけでも、業務の進め方に大きなちがいが生まれるはずです。
【まとめ】「法務担当者はスタッフであるから」というときのスタッフ(前)
スタッフにはいくつもの意味があって、
例えば、お笑いのネタの一部だったり、とあるゲームの特殊な杖状の武器とか、ヴェルディ作曲のオペラのタイトルだったりします。
このようにたくさんの意味があるなかで、(日野)としては「スタッフとしてはこうあるべき」とか「法務担当者がこう言動するのはスタッフだからこそだ」など、スタッフという言葉に強い想いを持って使っています。
その強い想いが前提となる論の進め方をすることが多くあるため、「スタッフ」の意味、少なくともイメージが一致しないと、論がつながらないという事態が起こり得えることから、このブログにおける、「スタッフとしての法務担当者」とか「法務担当者はスタッフであるから~」と言うときのスタッフの意味を定義しようというのが今回のテーマです。
このブログで「フタッフとして~」とか「~はスタッフだから~」というときの「スタッフ」は、経営学の領域に、経営学の中でも組織論の分野にあります。
そこで経営学の中のスタッフをひもといていくわけですが、なにから始めるかというと、社会科学・人文科学ならまずは「有斐閣アルマ」シリーズです。
さくっと300頁くらいで体系も掴めます。
次に有斐閣双書、続いて最新の教科書や古典的テキストを引いてアカデミズムの香りを感じてきました。
ここまで挙げてきたような学部生向けのテキストや研究者の論文などは、いろいろの論点が記載され、そこで書かれていることは、そのあと書かれる論点とをつなげる意図があることもって、問題提起的な文章が続き一読しただけ、ずっと問題提起だけのように感じ明瞭・端的からほど遠い文章です。
一方で学部生向けテキストを見たあとに診断士試験のテキストを見てみると端的です。
資格試験のテキストは試験対策という性格上、答えを用意する必要があり、本来は複雑なものであっても割り切って、端的にする必要があるからです。
では資格試験向けのテキストだけ見ておけばよいかというと、現実には実務では、「○○とは~である」という一義だけでは対応できないことが多々あり、資格試験で要求される端的な定義をベースに、それとは別の多面的な意味や周辺にある論点を知っておくことが実務上必要で、その際には多くの論点に触れられている学部生向けのテキストが有用、ということにまわりまわります。
同じ「テキスト」と名称の本であっても、学部生向けのテキストと資格試験向けのテキストでは性格がまったく違い、どちらがより良いということではなく、目的に応じて使い分けるべき物であって、補い合う性質の物です。
調べものをするときは、研究向け・実務向けの両方から情報を採っていきたいものです。
–いったん完–