【0115】資格試験ランキング 7 of 7

10-ビジネス法務76資格・試験, 95こぼれ話, 97最終話, 99引用

さて、法務担当者にとって身近にある士業とその資格試験について、

資格試験の分類(ヨコ軸の分類として3つの視点「A:国家試験・民間試験」「B:資格・検定・学位」「C:相対試験・絶対試験」を、タテ軸として「偏差値ランキング」)をするとともに、

そもそも「士業」という言葉は明確な定義がある言葉ではないということを書いてきました。

 

ひとつ最後に特筆しておきたいことがあります。
今回挙げたのは、「試験難易度ランキング」であって、資格の優劣ではない、ということです。

 

十侍のなかで政書士という資格は蔑まれ馬鹿にされている場面をよく見かけます。
その理由はただひとつ試験の難易度でしか資格・検定の序列を見ていないからだと思います。

 

資格は許可の証でしかなく、その許可を受けた上で何をするか。

何をするかというのはどうやって世の役に立つかということで。このようにして世上の要望に応える、そのために資格が必要だ。という思考順で許可を得るための試験を受けるべきだと思います。

ひとつは、その資格に与えられる業務範囲がちがうということです。
たとえば、十侍で試験難易度最上位である公認会計士は、八士業ではありません。

戸籍法10条の2・住基法12条の2に基づく請求ができるか否かという一点だけをみると公認会計士・不動産鑑定士より行政書士が上ということになります(ただし、公認会計士になれる者は税理士に登録でき税理士は八士業のひとつです。とはいえ、公認会計士の資格だけでは八士業に含まれないことに変わりありません)。

 

もうひとつは、与えられた業務範囲における業務経験があるかどうかということです。

たとえば、試験難易度最上位の司法試験であっても訴訟に関わったことのなければ現実の問題に対してギリギリの判断というのはできないと思います。
そのような資格がなくても何十年も法務担当者していると一見して真っ黒の事案でもなにかひとつ要件をはずすことでグレーにすることができる、そういう知恵があります。

それなら後者の方が現実世界の役に立つことができます。

(日野)がよく相談にいく弁護士先生は、個人事務所でもうおじいちゃんで最近の商慣習が(例えばWebでの取引のこととか)わかっているのか不安になることもあるのですが、いまだに訴訟代理で飛び回っている人なので、いつ相談に行っても「自分が代理人ならこう主張する」という視点で語ってくれます。

そのときの助言の言葉がまず基本に忠実で、条文の文理解釈から始まるわけです。

(日野)などは「××という判例ではこうですが」というような文書を持って行っても、その弁護士はまず「●●法第●条では」などと条文を確認することから説明が始まります。

そのように基本に忠実な条文解釈の上に「メールより会いに行った方がいいんちゃうか?」というようなことをおっしゃいます。

これこそ訴訟代理人だなと思い知らされます。

 

この弁護士の他のたとえでは、

(日野)が初めて日商簿記検定を受験したときは会計事務所に勤めていました。
その受験結果である「2級・3級を同時に受験して2級だけ合格した」旨を、当所のお局事務員に伝えますと、そのお局事務員は「だからお前はあかんねん」と吐き捨てました。

3級より難易度の高い2級に合格したことを褒めてほしい(日野)の願い叶わず、切り捨てられたわけです。

そのこころは
現場で問われるのはその仕事をできるか・できないかであって、その前提となる知識を持っているか・否かではないわけです。
まして試験に合格しているか・否かではありません。

当時は悔しかったし腹が立ったわけですが、その後他所で経理をして税申告をしてみてやっと実感できたそのお局様の言葉(本質を理解していないから3級に落ちるのだ、2級の合格はまぐれだから価値がない、本質を理解してないやつに実務はできん)なのでした。

 

これらの例からいいたいのは、資格は資格だ、ということです。

さて、「アメリカの弁護士」と聞くと、なにやら凄い人のような気がしますよね。(…)しかし、弁護士などの国家資格を持っている人が凄いと思うのは、世界広しといえども、日本くらいなのです。特にアメリカ国内の弁護士などは、「石をなげると弁護士に当たる」というくらい、弁護士資格を持っている人が多いのです。

そうですね、日本を舞台にして分かりやすく表現すると、簿記検定2級レベルがアメリカの弁護士だと考えてもよいでしょう。

小島大徳『経営学博士が教える試験免除で公認会計士・税理士になる究極の方法>

訴訟代理したことのない弁護士、法務局に行ったことのない司法書士、経理したことのない税理士(…)米国に住んだことのない米国弁護士とかは使い物になりません。

しかし、それでも資格があることで代理ができます。
反対に、法人の従業員として訴訟経験や登記業務や税申告をいくらやっていても、資格がなければそれを業としてすることはできません。

 

さて、

明治維新直後や先の大戦直後の混乱期ならいざしらず、
社会のルールが固まって数世代が回ったあとの現代において、

このような免許制度は全面的に見直す必要な時期にあるように思います。

–完–


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