【0151】山口翼 編『日本語大シソーラス』 を読む

21-読解する技法

さて、次回から「読解力の向上に資すること、その手がかり」というテーマを投稿していきますが、そのなかで(一般的な国語辞典とは)別の辞典を引きます。

初登場『日本語大シソーラス』です。

このブログではいろいろに辞典を使っていますが、この『日本語大シソーラス』は少し特殊な物であるため、テーマからは抜き出して、どういう物かを紹介しておきます。

 

この『日本語大シソーラス』がどういう物か、次の記載がもっともよくその内容を現しているように思います。

“本書は言葉捜しと類語検索に適した辞書である。分かり易い例で言うと、歳時記を季語のみにとどめず日本語全体に拡げたものと考えて貰って差し支えない山口翼『日本語大シソーラス』 下線は(日野)による>“

この引用の下線部分“歳時記を季語のみにとどめず日本語全体に拡げたもの”が、(日野)にとっては大変分かり易い例であったのですが、歳時記を見たことがなければどういう物かわからないかもしれない。

 

では、比喩より実際、『日本語大シソーラス』を開いてみます。
探すことばは「そろばん」です。

 

まず、全体の3分の1程度を占める索引のなかから「そろばん」を探します。

すると、次のイメージ図のように「そろばん」「そろばんがあう」「そろばんがたつ」「そろばんかんじょう」「そろばんだかい」「そろばんをはじく」という表現が並んでいます。

そろっていない【揃っていない】

 半端……0094.03

 揃っていない……0229.17

そろっている【揃っている】

 同じ・等しい……0032.01

 揃っている……0228.38

そろばん【算盤】

 計算……0403.06

 事務機器……0931.22

 計器……0933.01

そろばんがあう【算盤が合う】

 儲ける……0831.04

 損しない……0832.03

そろばんがたつ【算盤が立つ】

 才能・名人……0330.13

 知力……0384.03

 物に通じている……0385.04

 商売上手……0357.06

そろばんかんじょう【算盤勘定】

 商量……0403.05

 計算……0403.06

そろばんだかい【算盤高い】

 けち……0544.10

 打算……0830.02

そろばんをはじく【算盤をはじく】

 計算……0403.06

 打算……0830.02

そろり

 おもむろに……0250.04

 花器……0927.22

ぞろりと

 ぞろりと……0569.13

(後略)

 

このイメージ図を見てみると、それぞれの表現の下に、別の言葉と6桁の数字が並んでいます。
「そろばん」の下には「計算0403.06/事務機器0931.22/計器0933.01」、「そろばんがあう」の下には「儲ける0831.04/損しない0832.03」という具合です。

 

ここで例えば「そろばん」の下位にある「計算0403.06/事務機器0931.22/計器0933.01」のうち「計算0403.06」とあるので「0403」のページを見てみると、次のイメージ図のようになっています。

0403 比較・参照・計測

01 比べる

比較 比較(ひこう) 対比 比べ 較べ 比べ物 比況 比定(ひてい);計較 商量 比量 (後略)

02 照合する

(中略)

06 計算

計算 運算 算定 算出 算当(さんとう) 算勘 差し引き 差引勘定;計算する;割り出す 弾く 弾き出す;算盤をはじく 算盤を置く 算盤勘定;金勘定 金訳 算用立て; (後略)

という具合に“計算 運算 算定 算出 算当 算勘 差し引き 差引勘定;計算する;割り出す”などの語彙が並びます。

続いて、「そろばん」の下位にある「計算0403.06/事務機器0931.22/計器0933.01」のうち「事務機器0931.22」を見てみると次のイメージ図のようになっています。

0931 文具

01 文具

文具 文房具 ステーショナリー;教具 校具;学用品(後略)

02 ペン

(中略)

22 事務機器

事務機器 事務用品;事務机0923.02;算盤0933.01;タイプライター;コンピューター0875;電話ファックス0940.03;バーコード・スキャナー;シュレッダー;コピー機 複写機 ゼロックス

23 タイプライター(後略)

今度は“事務機器 事務用品;事務机;算盤;タイプライター;コンピューター;電話ファックス;バーコード・スキャナー;シュレッダー;コピー機 複写機 ゼロックス”とまた別の語彙が並びます。

このように、たったひとつの言葉「そろばん」から“計算”という言葉が出てきたり“シュレッダー”という言葉が出てきたりします。

 

普段生活していて「そろばん」と聞いたときに、「計算」は連想されやすいものですが、「シュレッダー」はなかなか出てきません。

この普段なかなか結びつかない言葉がつながるところにこの『日本語大シソーラス』のおもしろさがあります。

 

こういう物なので、ひとつの言葉から他の言葉を連想するときには、『日本語大シソーラス』が他に比べる物が見当たらないほどに、役に立ちます。

次のテーマ「読解力の向上に資すること、その手がかり」のなかで、この『日本語大シソーラス』を使って論を展開していく場面がありますので、その際はまたこのページと相互にリンクを貼る予定にしています。

21-読解する技法


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