【0208】商標法を学ぶ前に 2 of 3

10-ビジネス法務26知的財産法

知的財産法はむずかしいと感じていた(日野)が開眼した、
小谷『商標教室』に学ぶ、知的財産法の捉え方を開陳しようという話の続きです。

 

前回は、“商標感の違い”、裁判官も学者も弁理士も弁護士も基本的な見解が違っている
という、実体験として薄々感じていたことがどうやら事実らしいことがわかりました。

 

小谷『商標教室』のはしがきでは次のように続きます。

原因は商標法にあることが分かりました。否、商標法が悪いのではなく、商標法は登録制度だけを規定しているにもかかわらず、商標法が商標のすべてを規定していると誤解されている点が問題だったのです。

商標自体は、「星」や「ライオン」など、ただの文字や図形ですので別に難しいことはありません。一方、商標法では商標とは文字、図形、記号などであり、商品について使用されるものと定義しているだけですが、商品に使用される文字や図形がすべて商標であるはずがありません。しかし、商標法ではそれ以上の説明はなく、すべて解釈にゆだねられているため、商品に登録商標に類似する文字が使用された場合、それが商標かどうかは当然争いになります(商標論)。商品や役務が何かについては、定義規定さえ置かれていないのです(商品論)。そして顕著性を欠く商標は登録されませんが、何が顕著性を欠く商標かは商標法からはわかりませんし、商品によっても違ってきます(顕著性論)。商標の類似にいたっては(…)(類似性論)。

小谷武 『商標教室(基礎篇)』p2-3 下線は(日野)による>

なかなか衝撃的な文章でした。
“商標法は登録制度だけを規定しているにもかかわらず、商標法が商標のすべてを規定していると誤解されている”
言われてみればその通りです。

私法の代表である民法も、現実の生活があって、その一部を規定しているだけのものです。
たとえば契約ひとつとっても、現実に数多ある契約類型の一部を取り上げただけであって、そうして取り上げられ典型契約と呼ばれるようになった契約があれば、それに当てはまらな非典型契約があります。

比較的身近な民法であれば現実の生活が前提となるところ、
商標法となるとそうは捉えることができません。

どうしても、法によって創られた権利、商標法がすべてを規定していると誤解してしまいます。

これは商標だけでなく、知的財産法全般にある思い込みのように思います。

 

この思い込みが、商標法をはじめ知的財産法全般の理解を妨げているということに気づきました。

–次回につづく–


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