【0240】御社は、電子契約できますか? 2 of 4

10-ビジネス法務

新型コロナによる緊急事態宣言のあと、
「紙の契約書に押印ではなく電子契約でできないか」という問い合わせが増え、
2020年も暮れに近くなると、「電子契約が当り前」のように言われることも出てきました。
それでも(日野)の回答は「当事者型なら可だけど立会人型は不可」から変わりませんでした。

 

その回答の素になったのが、日経新聞(2020年5月30日)に載っていた次の記事です。

電子契約の効力 法的リスクも 制定20年前第三者書名は想定外

この先を続けるために必要な範囲で引用します。

電子署名法第3条は、簡単にいうと「電子文書に本人だけが行える電子署名がなされていれば、文書は本物として成立する」と規定する。”

“この条文の抱える問題が浮上したのが、今や一般的なクラウド型の電子契約だ。国内で8割のシェアを握る弁護士ドットコムの「クラウドサイン」など、現在普及している電子契約サービスは実は、当事者同士が電子署名をしない「立会人型」と呼ばれる形式だ。”

“従来有効だとされてきた電子署名は、ICカードを用いた方法や、クラウド上であっても「当事者型」と呼ばれる形式だ。利用者が認証サービスを手掛ける事象者に自らを証明する書類などを提出し、事業者が電子証明書の入ったICカードや電子ファイルを発行。それを使って当事者同士が署名をする。”

“法務省などは立会人型の電子契約書について、「電子署名法3条に基づく推定効(文書が有効だと推定されること)は働き得ない認識している」との見解を12日の政府の規制改革推進会議の会合で示した。”

 

非常にわかりやすく、秀逸な記事でした。

電子署名法3条の文理解釈から始まり、世の流れに触れつつも、立会人型が電子署名法3条にいう「本人だけが行える電子署名」といえるかという当てはめを行い、判例も無いと締めくくります。

ホウタンとして見習うところの多い記事です。

 

ここで電子署名法3条を見てみます。

電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)

第2章 電磁的記録の真正な成立の推定

第3条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

我々法務担当として、まず第一の拠りどころは条文、その文理解釈です。

次いで、条文の要件・効果をいかにあてはめるのか、ということを考えるときに、
判例が(とある事情に対するあてはめの答えであるから)、第二の拠りどころとなります。

この2つ以外は、いかに理論的に正しくても参考情報でしかありません。
条文に書いてないことに関しては、理論的に正しい学者や当局の解釈が、一般に広がることで、司法の判断に影響を与えるかもしれません。
しかし、司法が判断するまでは参考情報です。

 

まずは条文とその文理解釈が第一です。
文理解釈を超えるのは、(とある事情における正義の実現ために繰り出される)論理解釈だけで、
それを繰り出せるのは裁判官だけだと考えています。

 

–次回につづく–

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