【0064】フレームワークとしての法的三段論法(前) 4 of 7

14-連載-法務三大フレームワーク11環境整備, 12経営法務/戦略法務, 13予防法務, 14臨床法務, 16内部関係, 17継続関係, 18突発関係, 21基本六法, 22民商法, 23労働法, 24消費者法, 25経済法, 26知的財産法, 61契約手続き, 62リスク管理, 63意思決定, 76資格・試験, 99引用

–前回までのあらすじ–
「法務担当者の業務に役立つフレームワークをまとめよう」をテーマとして、その第1号として紹介する「法的三段論法」は「AならばBである」「BならばCである」だから「AならばCである」
(大前提)すべての人間はいつか死ぬ→(小前提)シーザーは人間である→(結論)シーザーはいつか死ぬという、日常の会話に自然に使っている三段論法の一種で、法的三段論法の具体例は



(抽象的法規範:規範定立)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定:あてはめ)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論:結論)ブルータスは死刑に処せられる。

髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成
「規範定立」「あてはめ」「結論」の三段階、それぞれ見ていくと、まず、「規範定立」の「規範」としては法律の条文が該当し、条文は「要件」と「効果」で構成されています。そして法的三段論法の第1段階である(規範定立)は「論理学上の三段論法」でいうと(大前提)に当たります。

このあらすじの最後の一文からなにを言いたいかというと、「三段論法と法的三段論法では、各段階で、同じもの・同レベルのものを求められている」ということです。

 

論理学上の三段論法における大前提とは、「AであればCである」というものです。

法的三段論法における規範とは「要件があれば効果が発する」です。

ここで論理学上の三段論法=法的三段論法とすると、「A=要件」、「C=効果」です。

法的三段論法の第1段階には、「要件と効果を書いた法律の条文」が置かれるのが通常です。

 

三段階を第1段階から順に説明すると言って始めたものの、ここまでの第1段階を説明してきたペースで進むといつまでも終わらない気がしてきますが、論理学上の三段論法=法的三段論法として各段階が対応することを説明するために第1段階は特別に長くなりました。あと二段階はサクサクと進みたい。

法的三段論法の第2段階:あてはめ

次に、「あてはめ」です。

あまり好きな例ではないのですが)さきに挙げた具体例を見ながら説明していきます。



(抽象的法規範)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論)ブルータスは死刑に処せられる。

髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成

この例における「ブルータスはシーザーを殺した者である。」があてはめです。

 

前の段階(=規範定立)で規範が提示されます。その規範には要件と効果が含まれています。

その要件と効果のうち、要件を満たすかどうか確認する作業が第2段階「あてはめ」です。

例でいうと「人を殺した者は」が要件です。

ここで、「ブルータスがシーザーという人を殺した」という事実があるときに、この事実が要件に該当するかを確認します。これが「あてはめ」です。

「ブルータスがシーザーという人を殺した」という事実に辿り着くまでに、「シーザーは人か」「ブルータスが殺したのか」「ブルータスに殺意はあったのか」などの事実を証拠の積上げにより確定していく作業を「事実認定」といいます。この話もおいおい取り上げたいと思っています。

法的三段論法の第3段階:結論

最後に、「結論」です。

ここまで来たら変えられない)さきに挙げた具体例を見ながら説明していきます。



(抽象的法規範)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論)ブルータスは死刑に処せられる。

髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成

この例における「ブルータスは死刑に処せられる。」が結論です。

第1段階で要件と効果を提示(AならばCである)し、第2段階で事実が要件に該当することが確認できた(BはAである)ので、第3段階では、事実が効果を導く(だからBはCである)ことを宣言します。

(規範定立)人を殺した者は死刑に処す→(あてはめ)ブルータスはシーザーを殺した→(結論)ブルータスを死刑に処する

これが法的三段論法です。

–次回につづく–

(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。


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