【0064】フレームワークとしての法的三段論法(前) 4 of 7
「法務担当者の業務に役立つフレームワークをまとめよう」をテーマとして、その第1号として紹介する「法的三段論法」は「AならばBである」「BならばCである」だから「AならばCである」
という、日常の会話に自然に使っている三段論法の一種で、法的三段論法の具体例は
“
(抽象的法規範:規範定立)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定:あてはめ)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論:結論)ブルータスは死刑に処せられる。
<髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成
”
このあらすじの最後の一文からなにを言いたいかというと、「三段論法と法的三段論法では、各段階で、同じもの・同レベルのものを求められている」ということです。
論理学上の三段論法における大前提とは、「AであればCである」というものです。
法的三段論法における規範とは「要件があれば効果が発する」です。
ここで論理学上の三段論法=法的三段論法とすると、「A=要件」、「C=効果」です。
法的三段論法の第1段階には、「要件と効果を書いた法律の条文」が置かれるのが通常です。
三段階を第1段階から順に説明すると言って始めたものの、ここまでの第1段階を説明してきたペースで進むといつまでも終わらない気がしてきますが、論理学上の三段論法=法的三段論法として各段階が対応することを説明するために第1段階は特別に長くなりました。あと二段階はサクサクと進みたい。
法的三段論法の第2段階:あてはめ
次に、「あてはめ」です。
(あまり好きな例ではないのですが)さきに挙げた具体例を見ながら説明していきます。
“
(抽象的法規範)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論)ブルータスは死刑に処せられる。
<髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成
”
この例における「ブルータスはシーザーを殺した者である。」があてはめです。
前の段階(=規範定立)で規範が提示されます。その規範には要件と効果が含まれています。
その要件と効果のうち、要件を満たすかどうか確認する作業が第2段階「あてはめ」です。
例でいうと「人を殺した者は」が要件です。
ここで、「ブルータスがシーザーという人を殺した」という事実があるときに、この事実が要件に該当するかを確認します。これが「あてはめ」です。
(「ブルータスがシーザーという人を殺した」という事実に辿り着くまでに、「シーザーは人か」「ブルータスが殺したのか」「ブルータスに殺意はあったのか」などの事実を証拠の積上げにより確定していく作業を「事実認定」といいます。この話もおいおい取り上げたいと思っています。)
法的三段論法の第3段階:結論
最後に、「結論」です。
(ここまで来たら変えられない)さきに挙げた具体例を見ながら説明していきます。
“
(抽象的法規範)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論)ブルータスは死刑に処せられる。
<髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成
”
この例における「ブルータスは死刑に処せられる。」が結論です。
第1段階で要件と効果を提示(AならばCである)し、第2段階で事実が要件に該当することが確認できた(BはAである)ので、第3段階では、事実が効果を導く(だからBはCである)ことを宣言します。
これが法的三段論法です。
–次回につづく–
(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。