【0074】フレームワークとしての法的三段論法(後) 5 of 8
–前回までのあらすじ–
法的三段論法の利用上の注意点1:三段論法自体が持つ罠
まず、ひとつめの「三段論法自体が持つ罠」とはどういうことか見ていきます。
次の論証を見てみましょう。
論証ア | 論証イ | |
前提1 | 雨男とは、その人が何かをすると雨が降るといわれる男性(旺文社国語辞典)である。 | 雨に早く気付く人はエロい。 |
前提2 | (日野)が定時前に退社すると雨が降る。(日野)が散歩に出ると雨が降る。 | オット氏は、ツマ氏より早く雨に気づいた。 |
結論 | (日野)は雨男である。 | オット氏はエロい。 |
(ここで、ようやく、冒頭の、ダレトク話が役に立ちます。長かった、ここに辿り着くまで遠かった。一応リンク貼っときますよ、論証アは【0057】、【0070】。論証イは【0061】、【0070】)
論証アもイも論証としては正しいと言えます。
しかし、それで導かれる結論は正しいと言えるでしょうか。
残念ながら(この流れなのでお察しの通り)正しい結論とは言えません。
前提は1・2ともに正または負でなければならないところ、論証ア・イともにそうはなっていません。
論証アは前提2が(たまたまであって、常にでない点で)まちがっています。
論証イは前提1が(因果関係がない点で)まちがっています。
このように、どちらかの前提がまちがっているとまちがった結論が出てしまう。
“
論証が論理的に正しいかどうかということは、結論が正しいかどうかということと区別しなければなりません。前提が間違っていれば、いくら論証が正しくても結論は必ずしも正しくはならないし、(…)論証と前提がともに正しければ、結論は確実に正しくなる、ということだけが保障されます。<三浦俊彦 『本当にわかる論理学』>
“
前提のどちらかが間違えばまちがった結論が出るわけですが、このときに三段論法がより都合が悪いのは、さも正しいかのような装いで、まちがった結論が出るということです。
論証ア・イはともにこの例です。
因果関係のないところに因果関係を見出してしまい、合理的でない行動を採ることにつながります。
この前提が間違えば間違った結論が出るということは、なぜ法的三段論法を使うのかの理由のふたつめで挙げた「他人を納得させる効力が高いから」という面の裏返しでもあります。
説得力が高い、故にまちがいに気づかない。
ということです。
注意して使わないと、誤を正としてしまいます。
まちがった(正義に反する)主張をしてしまうことになります。
誤った論理にはいくつかの類型がありますが、そのうちいくつかを紹介しておきます。
“
- すべてのカニにはかん脚(はさみ)がある。
- ザリガニにはかん脚がある。
- したがって、ザリガニはその名の示す通りカニの一種である。
生物を専攻していない人でも、おかしな結論が出ていることは明らかだ。問題はなぜ、おかしくなってしまったのかだ。図で考えればわかりやすい。カニがハサミを持っていても、ハサミを持っているのがカニとは限らないからだ。
<船川淳志 『ロジカルリスニング』>
“
これはさきほどと同じく前提がまちがっている例です。((日野)が用意したエピソードだけでは不安なので挙げておきます。)
–次回につづく–
(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。