【0074】フレームワークとしての法的三段論法(後) 5 of 8

14-連載-法務三大フレームワーク11環境整備, 12経営法務/戦略法務, 13予防法務, 14臨床法務, 16内部関係, 17継続関係, 18突発関係, 21基本六法, 22民商法, 23労働法, 24消費者法, 25経済法, 26知的財産法, 61契約手続き, 62リスク管理, 63意思決定, 76資格・試験, 94伏線・回収, 99引用

–前回までのあらすじ–

法的三段論法が「どういうもので」「なぜ必要で」「どう使えばよいのか」のうち「なぜ必要か」について、ふたつの理由「法的争いの終局的解決は裁判によるから」、「他人を納得させる効力が高いから」を説明してきました。加えて「法的三段論法を活用するために知っておくべき注意点」について、こちらも「なぜ必要か」と同じくふたつの理由「三段論法自体が持つ罠」「すべての問題に使えるわけではない」を挙げておきます。

 

法的三段論法の利用上の注意点1:三段論法自体が持つ罠

まず、ひとつめの「三段論法自体が持つ罠」とはどういうことか見ていきます。

次の論証を見てみましょう。

  論証ア 論証イ
前提1 雨男とは、その人が何かをすると雨が降るといわれる男性(旺文社国語辞典)である。 雨に早く気付く人はエロい。
前提2 (日野)が定時前に退社すると雨が降る。(日野)が散歩に出ると雨が降る。 オット氏は、ツマ氏より早く雨に気づいた。
結論 (日野)は雨男である。 オット氏はエロい。

ここで、ようやく、冒頭の、ダレトク話が役に立ちます。長かった、ここに辿り着くまで遠かった。一応リンク貼っときますよ、論証アは【0057】【0070】。論証イは【0061】【0070】

 

論証アもイも論証としては正しいと言えます。

しかし、それで導かれる結論は正しいと言えるでしょうか。

残念ながら(この流れなのでお察しの通り)正しい結論とは言えません。

 

前提は1・2ともに正または負でなければならないところ、論証ア・イともにそうはなっていません。

論証アは前提2が(たまたまであって、常にでない点で)まちがっています。

論証イは前提1が(因果関係がない点で)まちがっています。

 

このように、どちらかの前提がまちがっているとまちがった結論が出てしまう。


論証が論理的に正しいかどうかということは、結論が正しいかどうかということと区別しなければなりません。前提が間違っていれば、いくら論証が正しくても結論は必ずしも正しくはならないし、(…)論証と前提がともに正しければ、結論は確実に正しくなる、ということだけが保障されます。

三浦俊彦 『本当にわかる論理学』

前提のどちらかが間違えばまちがった結論が出るわけですが、このときに三段論法がより都合が悪いのは、さも正しいかのような装いで、まちがった結論が出るということです。

論証ア・イはともにこの例です。

因果関係のないところに因果関係を見出してしまい、合理的でない行動を採ることにつながります。

 

この前提が間違えば間違った結論が出るということは、なぜ法的三段論法を使うのかの理由のふたつめで挙げた「他人を納得させる効力が高いから」という面の裏返しでもあります。

 

説得力が高い、故にまちがいに気づかない。

 

ということです。

注意して使わないと、誤を正としてしまいます。

まちがった(正義に反する)主張をしてしまうことになります。

 

誤った論理にはいくつかの類型がありますが、そのうちいくつかを紹介しておきます。

  • すべてのカニにはかん脚(はさみ)がある。
  • ザリガニにはかん脚がある。
  • したがって、ザリガニはその名の示す通りカニの一種である。

生物を専攻していない人でも、おかしな結論が出ていることは明らかだ。問題はなぜ、おかしくなってしまったのかだ。図で考えればわかりやすい。カニがハサミを持っていても、ハサミを持っているのがカニとは限らないからだ。

船川淳志 『ロジカルリスニング』

これはさきほどと同じく前提がまちがっている例です。((日野)が用意したエピソードだけでは不安なので挙げておきます。

–次回につづく–

(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。


このページの先頭へ