【0073】フレームワークとしての法的三段論法(後) 4 of 8

14-連載-法務三大フレームワーク11環境整備, 12経営法務/戦略法務, 13予防法務, 14臨床法務, 16内部関係, 17継続関係, 18突発関係, 21基本六法, 22民商法, 23労働法, 24消費者法, 25経済法, 26知的財産法, 61契約手続き, 62リスク管理, 63意思決定, 76資格・試験, 99引用

–前回までのあらすじ–

法的三段論法が「どういうもので」「なぜ必要で」「どう使えばよいのか」のうち「なぜ必要か」について、ふたつの理由「法的争いの終局的解決は裁判によるから」、「他人を納得させる効力が高いから」のうち後者の話に入りました。
前回を要約すると、“裁判は、あらゆる行為のなかで最上位の客観性を求められる。それは主張を認められず敗訴した者=国家的な強制力をもって主張を否定された者が、その裁判に納得を得るためには、裁判に客観性が要求される。”ということでした。

 

自身の主張とは異なる結論が出されたときに納得できる程度に、少々の不満があったとしても仕方ないかと割り切れる程度に、公平で客観的と思われる裁判をしなければならない。

その客観性を担保するひとつの手段として前回は手続保障に関する説明を引用しました。

次の引用が、公平で客観的と思われる裁判の必要性について、より直接的に示しているかもしれません。


「法の支配」は、何が法規範であり裁判規範であるかについての決定権を司法裁判所に専属させ、裁判官の判断を法的三段論法に拘束せしめることによって、実現される。つまり、前者は、法の支配の外部に向かったコントロールによって実現される司法権の政治的権力からの独立の確保維持――三権分立――を意味し、後者は、それの内部に向かったコントロール――法のDogma――によって実現される公正な裁判の確保維持を意味する。このように、推論的三段論法の過程は、近代法の「法の支配」の思想と結びついて、司法の独立と司法の公正を司法の内部から保障する機能を有すると考えられる点に意義がある

髙橋明弘 『法学への招待』

終局的解決で、自身の主張と異なっていても従わなければならない。
少々の不満は押さえられる程度の納得感を与えなければならない。

そのような役割を果たすために法的三段論法が利用されているということは、それだけ説得力のある思考の枠組みだということの証拠になると考えます。

 

なんらかの法的な問題が発生したとき、法務担当者として問題解決のための案を提供するわけですが、その案を当該問題の当事者や自身の上司や経営幹部に採用されなければ、どんなに正しい案も意味を持ちません。

自分の案を他人に採用してもらうには、その考え方・考えの道筋を説明し、理解してもらう必要があります。
「ようわからんけどそれでいこか」という程度の問題もありますが、そうでない問題と向き合うときのために、しっかりと他人の納得を得られる思考方法を持っておくべきです。

 

その意味で、少々不満でも従わなければならない裁判に利用されている法的三段論法を使いこなせるようになりましょう、ということです。

 

これが、法務担当者にとって法的三段論法が必要になるのはなぜかと問うたとき挙がる理由ふたつのうちのふたつめ「他人を納得させる効力が高いから」でした。

 

法的三段論法を活用するために知っておくべき注意点

ここまで、なぜ法的三段論法が必要か、ということを見てきました。

よい面に着目してきたわけですが、一方でよくない面もあります。

ここでの「よくない面」という言葉の意味は、法的三段論法を活用していく上で知っておくべき点がある、使うからには知っておくべきマイナス面もあるということです。

よくない面もあるということを知った上でそれでも利用していかなければならないと思います。

 

注意点も、なぜ必要かと同じく、ふたつ挙げておきます。

ひとつは「三段論法自体が持つ罠」で、もうひとつは「すべての問題に使えるわけではない」です。

–次回につづく–


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