【0071】フレームワークとしての法的三段論法(後) 2 of 8

14-連載-法務三大フレームワーク11環境整備, 12経営法務/戦略法務, 13予防法務, 14臨床法務, 16内部関係, 17継続関係, 18突発関係, 21基本六法, 22民商法, 23労働法, 24消費者法, 25経済法, 26知的財産法, 61契約手続き, 62リスク管理, 63意思決定, 76資格・試験, 99引用

–前回までのあらすじ–

法務担当者の業務に役立つフレームワークをまとめよう、まずフレームワークとはどういうものかを【0057】~4回にわたり、次にフレームワークの第1号として法的三段論法について「どういうもので」「なぜ必要で」「どう使えばよいのか」のうち【0061】~7回を前編として「どういうもので」「どう使うか」を書いてきたので、後編として残りの「なぜ必要か」ともうひとつ「法的三段論法を活用するために知っておくべき注意点」について書いていきます。

なぜ法的三段論法が必要か

法的三段論法について、「なぜ必要か」という点の話です。

 

法務担当者にとって法的三段論法が必要になるのはなぜか。

ここではふたつの理由を挙げておきます。

ひとつは「法的争いの終局的解決は裁判によるから」で、もうひとつは「他人を納得させる効力が高いから」です。

 

法的三段論法を使う理由1:法的争いの終局的解決は裁判によるから

まず、ひとつめの「法的争いの終局的解決は裁判によるから」とはどういうことか見ていきます。


法は、一般的な法的規準によって予め権利義務関係をできるだけ明確に規定して、紛争の予防に努めるだけでなく、具体的な紛争が発生した場合に備えて、法的紛争解決の規準・手続きを整備し、当事者間で自主的に解決できない紛争について最終的に公権的裁定を下す裁判所を設営する。

田中成明 『法学入門』 下線は(日野)による>

 

法務担当者の重要な業務のひとつに法的問題の解決があります。

商売をしていると、現場の担当者が「こらあかん、大問題や」と思う案件が日々発生します。そのうち法律が関わりそうな案件は法務担当者に持ち込まれます。

そのほとんどは、法務担当者である(日野)の助言に基づいて行動することで相手との交渉もすんなりと進み、事なきを得ます。

しかし、事なきを得ない場合どうなるのでしょうか。

つまり、当事者同士では解決できないときです。

このように、法的な問題・法的な争いを解決しようとするときに当事者同士で解決できなければ、訴訟を提起して裁判を受けることになります。

当事者同士の交渉では争いが鎮まらないときに、第三者である裁判所が裁判をしてくれます。この裁判において結論が出されるわけですが、その裁判に示される結論には強制力が伴います。

強制力が伴うということは嫌でも従わなければならないということです。

その嫌でも従わなければならない、強制力を持つ裁判が法的三段論法によってなされます。

裁判所・裁判官が裁判するときの思考の枠組みが法的三段論法であるということです。


裁判における法の適用過程は、一般に、具体的な事実関係を確定する事実認定と、個々の事実関係に適用すべき法規範を選択しその意味内容を解明する法の解釈という二つの作業に分けられる。そして、この過程は、伝統的に、適用されるべき法規範を大前提、具体的事実を小前提とし、法規範に事実をあてはめて判決が結論として導き出されるという、法的三段論法によって理解されてきた。
 例えば、「被告人甲を懲役5年に処する」という判決が下される場合、(中略)「Aという事実があればXという法律効果が生じる」「しかるに当該事件はAである」「故にXという法律効果が生じる」という法的三段論法に従って、このような判決が結論として導き出され正当化される

田中成明 『法学入門』 下線は(日野)による>

終局的な、蒸し返すことのできない、(言い過ぎかもしれないけど)絶対的な判断を形成するときの思考の枠が法的三段論法であります。法的三段論法がそのような利用をされているのなら我々もそれに倣って同じものを利用したほうがよいのではないか。

 

なぜ裁判所に対して右に倣えなのかというと、まちがった・正義に反する考え(それは敗訴の結果として正義に反するとされてしまう考えであるのですが)、を相手方に対して主張してしまう可能性が減るだろうということがいちばんの理由です。

この点次回に順を追って説明します。

–次回につづく–

(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。


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