【0076】フレームワークとしての法的三段論法(後) 7 of 8

14-連載-法務三大フレームワーク11環境整備, 12経営法務/戦略法務, 13予防法務, 14臨床法務, 16内部関係, 17継続関係, 18突発関係, 21基本六法, 22民商法, 23労働法, 24消費者法, 25経済法, 26知的財産法, 61契約手続き, 62リスク管理, 63意思決定, 76資格・試験, 99引用

–前回までのあらすじ–

法的三段論法が「どういうもので」「なぜ必要で」「どう使えばよいのか」に加えて「法的三段論法を活用するために知っておくべき注意点」について、ふたつの理由「三段論法自体が持つ罠」「すべての問題に使えるわけではない」のうち前者を説明してきました。

次に、法的三段論法を活用していく上で知っておくべき注意点ふたつのうちのふたつめ「すべての問題に使えるわけではない」とはどういうことか見ていきます。

法的三段論法の利用上の注意点2:すべての問題に使えるわけではない

これは、このテーマのはじめにフレームワークの説明をしているときから言っていることになります。


それぞれ一長一短があり、すべてに通用する決定版はありません。医者のたとえで言えば、内科には内科、外科には外科の治し方があり、内科と外科のどちらで治療するかは患者や病気によります。要は健康になりさえすればよく、問題に応じて最適なチョイスをするしかありません。
問題解決技法を学んだことのある人でも、大抵は自分が得意な限られたやり方しか知りません。それでは、欲求階層説でしられる心理学者A.マズローが言う「ハンマーしかないと、すべてが釘に見える」に陥ってしまいます。

堀公俊 『問題解決フレームワーク大全』

法的三段論法が強力であることは確かです。

終局的な判断に使われる思考の枠であったり、前提1・2のどちらかの前提がまちがっていても正しそうな結論が出るところであったり、まあ、強力なフレームワークです。

それでもすべての問題解決に使えるわけではないです。

 

注意点のふたつの内のひとつめである「前提が間違えば間違った結論が出るということ」が「なぜ法的三段論法を使うのかの理由」のふたつめで挙げた「他人を納得させる効力が高いから」という面の裏返しであれば、

注意点のふたつめであるこちらは、「使う理由」のひとつめに挙げた「法的争いの終局的解決は裁判によるから」の裏返しといえます。

裏返しというか、対応する側面といえるかもしれません。


法的思考による問題解決は、社会において生じるさまざまな問題を解決するために考え出された諸々の方式のワン・ノブ・ゼムにすぎない。法的思考は、人類が叡知を傾けて作り上げた一つの合理的な問題解決方法ではあるが、どのような問題の解決にも用いうる万能のものではない。また、いつも最良の方式ではなく、このような方式では適切に解決できないのみか、弊害を生み出すケースもありうる。いずれにしろ、法的思考による問題解決という方式を用いるにあたっては、そのメリット・デメリットをよく理解し、それぞれの場に合った適切な用い方をすることが重要であり、このような叡知こそ、実践知としてのリーガル・マインドの本領なのである。

田中成明 『法学入門』 下線は(日野)による>

 

法的争いの終局的解決が裁判によることを理由として、その法システムの一部である法的三段論法を使うわけですが、そもそも法自体が、世の中にたくさんある問題解決方法のうちのひとつでしかないのです。

メリットもデメリットある、法というシステムの中の一技法・思考の枠でしかないということです。


法システムも決して万能ではなく、一定のメリットがあれば、同時にデメリットも伴っていることは、本書でも繰り返し強調してきたところである。

田中成明 『法学入門』 下線は(日野)による>

–次回につづく–

(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。


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