【0063】フレームワークとしての法的三段論法(前) 3 of 7
「法務担当者の業務に役立つフレームワークをまとめよう」をテーマとして、その第1号として紹介する「法的三段論法」どういうものかを説明する上でます大切なことは、法的三段論法は「三段論法」の一種であるということで、まずは三段論法の具体例が
“
(大前提)すべての人間は いつか死ぬ
(小前提)シーザーは人間である
(結論)シーザーはいつか死ぬ
”
![AならばC、AならばB、であればBならばC](http://aquacl.hiho.jp/wp-content/themes/luxeritas/images/trans.png)
という「単純な三段論法」と言われる形になり、日常の会話(たとえば【0061】の冒頭の夫婦と雨の挿話)に自然に使っている三段論法の一種、いよいよ、法的三段論法の具体例です。
(「単純な三段論法」「論理学上の三段論法」の例と図は<髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成したものです)
いよいよ「法的三段論法」の具体例です。
ここでは先の「単純な三段論法」「論理学上の三段論法」に続いて、同じ書籍から引用します。これと同じよう刑法199条を例に挙げられることが多いです。
“
(抽象的法規範)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論)ブルータスは死刑に処せられる。<髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(準備中)が作成
”
論理上の三段論法における(大前提)(小前提)(結論)が、法的三段論法ではそれぞれ(抽象的法規範)(具体的事実の認定)(法的結論)に置き換えられています。
法的三段論法における(抽象的法規範)(具体的事実の認定)(法的結論)をそれぞれ(規範定立)(あてはめ)(結論)と言い換えることも多いです。
どちらかというと、「規範定立→あてはめ→結論」と書かれているのを見ることが多いです。
一例として引用しておきます。
“
法の適用にあたっては法的三段論法をマスターする必要があります。法的三段論法とは何でしょうか。①「規範の定立」をし、②規範に事実を「あてはめ」、③「結論」を導く手法のことです(略)<富永晃一 他 『ケースで学ぶ 実践への法学入門』>
”
では、この「規範定立」「あてはめ」「結論」の三段階について、それぞれ見ていきます。
法的三段論法の第1段階:規範定立
まず、「規範定立」です。
さきに挙げた具体例を見ながら説明していきます。
“
(抽象的法規範)人を殺した者は、死刑……に処す。
(具体的事実の認定)ブルータスはシーザーを殺した者である。
(法的結論)ブルータスは死刑に処せられる。<髙橋明弘 『法学への招待』>を基に(日野)が作成
”
この例における「人を殺した者は、死刑……に処す。」が規範定立にあたります。
この「人を殺した者は~」という文言は、刑法199条から抽出したものです。
“
刑法199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。”
この例のように、「規範定立」の「規範」として、まずは法律の条文が該当します。
(「まずは」というのは、「そうではないことがある」という意味で使っています。じゃあ「法律の条文以外になにが規範に該当するのか」ということに踏み込むとそれだけで1テーマ書くことになるので、それはまたいずれ。)
同じことを書いてくださっている書籍があるので引いておきます。
“
「規範の定立」とは何でしょうか。(…)法律の条文は「要件」と「効果」から成り立っているので、効果を導くために必要な要件や基準を提示すること、これを規範の定立といいます(…)通常、効果を導くための要件は、複数あります(…)が、その要件の中で、何を意味しているのかよくわからないものがある場合には、それはどういう意味なのか解釈することになります<富永晃一 他 『ケースで学ぶ 実践への法学入門』>
”
「効果を導く要件は複数ある」し、「それを解釈する必要もある」のであるが、その前に前提として「法律の条文は要件と効果から成り立っている」のでまずは法律の条文を提示します。
この第1段階は「論理学上の三段論法」でいうと(大前提)に当たります。
–次回につづく–
(追記)投稿当時は現在とちがい、管理人の名称は(準備中)でした。修正して現在の一人称である(日野)等に置換えをしています。