【0105】国語辞典の選び方 4 of 7

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–前回までのあらすじ–

言葉を調べるとっかかりとして専門的な物より国語辞典のほうが向いている、国語辞典を選んでみるためにまず分類、大きさと出版社で分類してみました。

 

国語辞典の選び方というけど、ちょっと前まで辞典を選ぶという発想がなかった

国語辞典の選び方をテーマに、国語辞典を分類する際のキーとしてサイズと出版社がある、ということを書いてきました。

そしてこの分類からは、大型といわれる国語辞典を出版しているのは小学館だけだということがわかりました。

さて、国語辞典の選び方というテーマで国語辞典を分類することから始めました。

「国語辞典を選ぶ」ということが当たり前のように進めてきましたが、それが当たり前ではないという話をしておきます。

実際つい最近まで、国語辞典を選ぶという発想は、(日野)にはありませんでした。

 

振り返ると(日野)は国語辞典といえば、ずっと旺文社国語辞典を使っていました。

手許にあるのは第九版で、奥付をみると「重版発行 2000年」とあります。

この発行年を見るとどうやら高校生の頃に入手したと思われます。

その入手の際にもなにか意思をもって旺文社国語辞典を選んだという記憶はありません。いつの間にか手許にありました。

国語辞典といえば意思もなく手に入れた旺文社国語辞典しか持っていなかったので、以来10数年に亘って言葉を調べるとなれば旺文社国語辞典を引いていました。

1冊持っていて不便もないので、書店に行って国語辞典を見比べるということもありません。

どうかすると、国語辞典にちがいがあると考えたこともありませんでした。

国語辞典は各社からたくさん出ているけれど、サイズが同じならどの国語辞典にも同じ言葉が載っていて、同じ意味が書いてあると思っていました。

 

そんな(日野)が国語辞典を見比べてみようと思ったのは、六法が入口です。

冒頭に「右手に持つのが剣であれば、左手にはホニャララを携えよう」という話を挙げましたが、ここで挙げたように、(日野)は何かを始めるときに先カタチから入ります。

ベースやるなら好きなプレイヤーと同じモデル。

簿記をやるなら経理っぽい大きな電卓を左手で叩くことから。

この流れで、法律をやるなら六法を選ぶところから始めたくなるわけです。

 

こうして、六法を選ぶために各社の六法を見比べてみたことが辞書・辞典を見比べてみた原体験で、このときにサイズと出版社と編集者・編集方針によって、含まれる法律がちがう、抄録であれば飛ばされる条項もあってどれを省略するかもちがう、どの条項にどの判例を載せるかもちがうし、同じ判例でも要約の仕方がちがう、それらの結果なのかレイアウトやフォントもちがう。というようにそれぞれに大きな違いがあることに気づきましたし、そのような違いによって使い勝手も変わることを実感したわけです。

 

そのような認識の変化を経てから、「このブログを始めよう」となったときに、「文章を書くならその左手にふさわしい国語辞典を選ばなければ」ということになります。

このときに初めて国語辞典を見比べてみたわけですが、そうして見比べてみていざ、国語辞典を選ぶとなったときに何を基準にして選ぶのか。

六法と同じように国語辞典にも編集方針があります。その編集方針によって登載される言葉も変わり、言葉の意味として記載される内容も変わってきます。当然レイアウトもフォントも変わります。

選ぶ基準というのはいろいろあると思いますが、結局はできる限り実際に見て比べてみて、自分に合うものを使うのがいちばんです。

選ぶ基準が自分に合うということであれば、(日野)としては、いろいろ見てみた結果やっぱり旺文社国語辞典がいちばんです。

(日野)が求めている意味がそこに書いてあるから、というのが理由です。

なんとなくこういう意味だったよなあ、と思って引いてみるとちゃんとその意味が書いてある。

旺文社国語辞典は(日野)にとってはそういうものでとても大切な一冊です。

 

たまたま手許にあっただけですが、結果としてそれがいちばんしっくりくる物だったわけで、幸運だと思います。

そんな(日野)にとっての旺文社国語辞典のような物がない人はどうやって選べばいいのか。

ふたたび、サンキュータツオ氏の本から引用してみますと、

「大人なら国語辞典は2冊持て!」これを私は、声を大にして言いたい。(…)私が考えるもっともオーソドックスな組み合わせは、スタンダードさが売りの『岩波国語辞典』と個性的な語釈の『新明解国語辞典』です。この2冊は、たとえば、フォーマルなスーツとややラフなジャケットとジーンズ、みたいな感じの組み合わせです。

(…)

2冊持つことの必要性として、<恋愛>という項目を詳しく比較してみましょう。『岩波国語辞典』の場合、(…)これだけです。しかし、先にも挙げましたが『新明解国語辞典』の第七版の場合、(…)と書かれています。(…)この2冊の記述の差っていったい何だろう? っていうことですよね。

<サンキュータツオ 『国語辞典の遊び方』>

多すぎて迷うなら、まずは上記の引用にあるように「岩波」+「新明解」がよいと思います。引用で「恋愛」を見比べていますが、このように見比べてみると、国語辞典を選ぶということの必要性と複数持つことのメリットが理解できると思います。

 

「岩波だけではわからない」「新明解だけではわからない」ということが理解できてくると、言葉が持つ多面性に気づきます。

一義で捉えることのできない言葉に深みを感じることができます。

こういう多面性や深みを知ることで、言葉に対する慎重さが生まれるはずです。

この言葉に対する慎重さを持つことは法務担当者にとって重要です。

たとえば、契約交渉の中で「自分はこういう意味で使っているけど、相手はちがう意味で捉えているかもしれない」ということを察知できるか否かで、その後の進み方が大きく変わることがあります。

双方が同じ前提に立つことができなければ、対話は咬み合うことなくずれていきやがて交渉決裂です。

言葉の認識の違いを察知できるかどうかは法務担当者にとって重要な能力です。

 

–次回につづく–


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