【0128】ホウタン的日本酒入門(前) 4 of 5

91-ホウタン的××入門

【承2】【酒の分類2】「生××」。製造工程の中での分岐の話

–前回までのあらすじ–

日本酒に対して仮説を持っていて「“純米大吟醸”というやつは同じ香りがする、どうやら酒造の所在地より造り方のちがいみたい」というもの、部長の送別の副産物で手許にある20数本を飲み比べて検証。ラベルには「大吟醸」「純米吟醸」「本醸造」「生貯蔵」「生酛」「生一本」…などと書いてある、純米・吟醸・本醸造は特定名称と言われるものだと判明。

前回に続いてラベルに書かれている単語の意味で、前回の純米・吟醸・本醸造に続いては、生貯蔵・生酛・生一本です。

どれも「生」という文字がありますが、生貯蔵には「要冷蔵」の文字があります。

生酛・生一本には「要冷蔵」はありません。

 

これも実は、清酒の製法品質表示基準は国税庁告示第8号(平成元年11月22日、最終改正平成29年国税庁告示第4号)に定めのあることなのです。

 

ただ、こちらは先に造りの工程を眺めてからのほうが理解が易いです。

<エイムック3234『日本酒のこころ』p107、木村克己『日本酒の教科書』p10を基に(日野)が作成>

 

上記の表が日本酒の造りの工程です。

タテに時間軸です。

ヨコ軸は、
いちばん左側□囲み内が「物(ぶつ)」の名称です。その物に対して行う「作業・工程」を破線の右先に書いています

たとえば、物である「原酒」と物である「生酒」というタテ軸の間に、破線が伸びています。その破線の先にある「ろ過」というのが工程です。「原酒」という物に対して「ろ過」という工程を経ることで「生酒」という物に変わります。

そういうことを示している図です。

※印をつけたところが今回のテーマ生酛、生貯蔵に関係します。

 

生酛とは

生貯蔵・生酛・生一本とどれも「生」という文字があって、

まず、生酛から。

生酛と書かれているのは、先の日本酒の造りの工程につけた※1の箇所、酒母の造りの違いをいっています。

生酛系酒母とは、わが国伝来の培養法で造られた酒母で、「生酛」と、明治時代にその製法を発展させた「山卸廃止酛」とに代表される。いずれも乳酸菌を自然に増殖させ、その乳酸菌の生成する乳酸によって雑菌の汚染を防ぐという、世界に類例を見ない酵母培養法である。(・・・)では、無数の微生物が存在する中で、生酛系酒母ではなぜ乳酸菌と清酒酵母だけを自然に、選択的に培養することができるのか。(・・・)ここでのポイントは、乳酸菌は亜硝酸に強く生育を阻害されないことと、硝酸還元菌は乳酸に弱いことである。そのため、乳酸菌の増殖に伴って硝酸還元菌は次第に死滅し、亜硝酸もなくなっていく。さらに乳酸菌は酸に弱いため、自らが生成した乳酸によって減少していく。(・・・)生き残っていた乳酸菌は酵母が生成するアルコールによって死滅し、多量の乳酸と清酒酵母だけが存在する酒母が完成する。

<小泉武夫監修『日本酒百味百題』p130>

このように、「自然に在る乳酸菌を取り込む」のが生酛造りの特徴です。

(自然の)生酛の記載がなければ、(醸造用乳酸を添加する)速醸系酒母で造られた酒であると推測されます。

 

–次回につづく–


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