【0108】国語辞典の選び方 7 of 7

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–前回までのあらすじ–

言葉を調べるとっかかりとして専門的な物より国語辞典のほうが向いている、国語辞典の分類方法、国語辞典を複数持つことの効用、法務担当者にとっての国語辞典の選び方として「権威の有無」が大切で、その選び方であれば広辞苑の一択であることを書いてきました。

 

【おまけ】結論、左手に携えるべき六法は

さてさて、冒頭【102】国語辞典の選び方 1 of 7で「右手に持つのが剣であれば、左手にはホニャララを携えよう」という話題を挙げましたが、法務担当者にとっての左手のホニャララは何なのでしょうか。

 

いろいろと他者のブログなどを読んでいると、法律実務家としては『携帯実務六法(東京弁護士協同組合)』を持ち歩きつつ判例を引くときは『電子版 模範六法(三省堂)』でカバーするのがベスト、らしいです。

 

想像すると確かにその通りです。

携帯性に優れているし、情報量も充分です。

弁護士先生がわが社まで来てくださって、そのような携帯アイテムでパパッパパパッと条文やら判例やらを参照されると納得してしまうし、反論する気なんて起こりません。

 

でもそれは、弁護士というだけで権威があるから、そもそも左手にどんなアイテム持っていても大丈夫なんです。だから携帯性が重要。スマートさが活きる。

対して(日野)などは、わが社の社長どころか自分の上長にも俄かには信じてもらえない立場なわけです。

そんな(日野)にとっては携帯性なんてものは足枷にしかなりません。重鈍なぐらいの権威が必要なのです。

 

そのあたりまだ容易には電子版は使えません。デジタルの文字と印刷された文字では重みが違います。

条文だけの六法に「XXという判例があります」などと口頭で補足するのも厳しいものがあります。文字でそこに書いてあるものを見てもらわなければ信じてもらえません。印刷された文字は相当重いです。覆しようがない権威があります。

 

そのような状況なので、まだ当分のあいだ左手には、判例六法か模範小六法が必要になります。

しかも、できれば手垢が着いてる位がよさそうです。

 

そのような程度の法務担当者からすると、「法律書は常に最新版で、毎年買換えなあかん」という意見には異を唱えることになります。

 

使い慣れた六法を手放すのは辛い。

法定利率の話をしながら判例六法まさぐっていたらパクっと商法514条のページが開いたときに目の前にいた話相手の人の驚いた表情が忘れられません。

このように手の感覚で開けるのがベストで、それは1ページでも変わると無理だし、同じ出版物でも開き癖のちがいで感覚は変わってしまいます。

だから毎年買換えるのは反対です。

とはいえ、法改正が反映されていないと判断まちがうこともあり得ます。

 

そうなると、毎年最新版を買うのだけど、最新版と手垢ついた旧版を見比べた上で、手垢ついた旧版を持ち続ける、ということになるのではないでしょうか。

多少の改正なら手書きメモで乗り切れるし、そうして見比べして改正点を書き出す作業をすることで改正が自分の中に浸透していくように思います。

そして、手垢というは、そのような改定の作業をする過程で残るものではないでしょうか。

 

こうして、冒頭の「右手に持つのが剣であれば、左手にはホニャララを携えよう」の法務担当者にとっての左手のホニャララ、結論、

左手には、真新しい聖書ではなく、一冊の引き慣れた六法を、

そのように使い込まれた六法こそ、現代日本における正義の女神の天秤に値するもののように思います。

そうして左手に携えるホニャララがわかったとして、はてさて、右手に持つべき剣とは何か。

それを手に入れることがより大きな課題のようにも思われますが、その剣というのが何かを定義することからすでに難題のようです。

天秤だけではなあ。

 

–完–


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